2014年に小林武史の元を離れセルフプロデュースへと移行(ただ小林との関係が途切れた訳では無くキーボード参加などが見られる曲もある)したというのがこの時期の最大トピックとなる。また音楽の聴き方が多様化していった時代背景故かシングル発売は激減。配信限定曲の割合が増えていき、2015年にはUSBアルバムという耳慣れない形態で18thアルバムをリリース。デビュー20年を超えてもまだまだ貪欲に進んでいった2010年代前半のミスチルをレビューしよう。


↓過去のレビューはこちらですのでクリック!
Mr.Children シングル&名曲レビュー その1 ~1992-1995~

Mr.Children シングル&名曲レビュー その2 ~1996-2000~

Mr.Children シングル&名曲レビュー その3 ~2001-2005~

Mr.Children シングル&名曲レビュー その4 ~2006-2010~


3rd配信限定シングル「かぞえうた」
2011年4月4日
「fanfare」以来約1年5か月ぶり、3作連続の配信限定シングル。東日本大震災の救援及び復興の資金に充てるための曲として制作され、収益金は「ap bank」へ寄付された。復興に向けて元気を出そうというよりは、悲しみの中からかすかな希望をすくい出すかのようにそっとそばに寄り添ってくれるバラード曲。一歩一歩、踏みしめて歩いていこうというような強い想いが感じられ、聴くたびに魂を揺さぶられるような感覚になる。震災後の混沌としたムードの中で聴いたのもあってかなり響いてきた一曲だった。この翌年発売の17thアルバムに収録され、発表から1年8カ月経って初CD化となった。
満足度★★★★☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]

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34thシングル「祈り~涙の軌道/End of the day/pieces」
2012年4月18日 初登場1位 初動17.4万枚 売上27.6万枚 登場14週
CDシングルのリリースは「HANABI」以来3年7か月ぶり。自身初のトリプルA面。桜井へのインタビューを記載した「Special Interview」の用紙が封入されていた。

「祈り~涙の軌道」
映画『僕等がいた』前篇主題歌。「Sign」や「しるし」辺りを思わせる安心安定のストリングスバラード。ただ「Sign」の頃よりも更にストリングスの比重が高い。バンドサウンドという点では物足りなさもあるものの、メロディーはやはり絶品。サビの〈さようなら〉三連発が強烈だが個人的にはAメロBメロのメロディー、流れが好きだ。
満足度★★★★☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]

「End of the day」
この3曲の中では最も軽快でアップテンポ。初聴きではそこまでハマらなかったが「祈り~涙の軌道」と並んでテレビでよく披露されていたので段々と好きになっていった。〈本当はもう掴んでて 届いてて 気付いてないだけ もっと もっと 羽ばたける日は来る きっと来る とりあえずそう信じて あと少し そう信じて〉というフレーズは当時よりもこの後の就活時や社会人生活において響いてきたし現在でもなお元気づけられている。ちなみに歌詞に放送問題用語である〈乞食〉が登場するのでこの部分を省いたラジオオンエア用音源も存在する。またカラオケDAMでは該当部分が〈××〉というマークに置き換えられている。
満足度★★★★☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]

「pieces」
映画『僕等がいた』後篇主題歌。ミディアムナンバー。メロディーは良いんだけどどうも前2曲と比べるとインパクトに欠けて地味だし、後のアルバムで聴いた際にも特に印象は上がらなかった。そこそこ良いC/Wという感じ。表記は無いがシングルとアルバムでは音源が異なるらしい(聴き比べしてないのでどこがどう変わっているのかは不明)。
満足度★★★☆☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]



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4th配信限定シングル「hypnosis」
2012年8月29日
日本テレビ系ドラマ『トッカン-特別国税徴収官-』主題歌。重たいストリングスバラード。「祈り~涙の軌道」の後だったという事もあり当時「またバラードか…」と思ったのを記憶している。2000年代後半からファンの間で疑問視されていた小林武史のオーバープロデュースに関しては「別に良いんじゃない?」というスタンスだった僕だが、遂にここで初めてマンネリを感じた。確かにメロディーとかは良さげなんだけど何というかすっごく普通。サビ前のBメロで高音が連発され、サビの出だしが低めというミスチルバラードとしては一風変わったキー設定がなされている事くらいがトピックか。ラストサビの〈もう現実に引き返せなくたっていい〉は特に地獄の高音でカラオケではヘロヘロになる(桜井本人もテレビで歌う際かなり苦し気だったし)。そんなわけで発表当初は何の印象も無い曲だったが、数年経ってたま~に聴くと新鮮さもあって良く聞こえては来る。特に秋空の下で感傷に浸りたい時なんかはピッタリだろう(どんな時だよ?)。
満足度★★★☆☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]

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「Marshmallow day」
資生堂『MAQuillAGE』CMソング。まったり&ミディアムナンバーが目立ったこのアルバムにおいては最も弾けたポップナンバー。「youthful days」を思わせるような疾走感があるが、あの頃程の鋭さは無く暖かさでくるまれているようなサウンド。先行配信だった「hypnosis」、ドラマタイアップ付の「常套句」と並んでリード曲としてテレビでも歌われていたがかつての「エソラ」等と比べると少し下の位置になると思う。3曲合わせてやっと「エソラ」1曲分くらいな感じ…?
満足度★★★★☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]

「常套句」
フジテレビ系ドラマ『遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~』主題歌。「祈り~涙の軌道」に続いてまたも生田斗真出演作品のタイアップとなった。〈君に会いたい 君に会いたい〉というシンプルなサビが強い印象を残す。あまりにもストレートな歌詞故の照れ隠しも込めてのこのタイトルなのだろうか?発表当初こそ「名曲だ!」と思っていたが、収録アルバムがまったり&ミディアムナンバーの連打だったのでアルバム全体の印象が(ミスチルとしては)あまり良くなく、故に最近では聞き返す事は無くなってしまった。「hypnosis」「Marshmallow day」と並ぶリード曲として2012年のMステスーパーライブで披露されていたが、殆どギターが目立たない構成のためただでさえ動きの少ないギター田原が眠ったように目を閉じ立ち尽くしていたのが衝撃映像として未だ印象に残っている。
満足度★★★☆☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]

「イミテーションの木」
アルバムタイトルにもなっている「イミテーション」という言葉が掲げられたミディアムナンバー。僕が思うにこの曲は、コバタケのオーバープロデュースやストリングスバラード連打への批判に対するこの時点でのミスチルなりの返答だったのではないか…と思う。今作発売当時、大人し過ぎるアルバムだな…「ロックンロールは生きている」んじゃなかったのかよ…と初聴きの印象がそれまでで最も低かったのだが同じくミスチルファンである大学の友人やゼミの知人は「素晴らしい曲ばかりだった」と声を揃えて絶賛しており世間との乖離を痛烈に感じたものだった。しかし思えば、ある人にとってはイマイチな曲でもまた別のリスナーにとっては絶世の名曲になり得るという事を学んだ出来事でもあった。もしかしたら、一生の思い出になったり、人生で一番好きな曲だと思える程に心を揺さぶられた人もいるかもしれない、と言うか絶対にいる。作品には色々な見方があって、どこかにそれを必要としている人が必ず居るという事である。そう思って聴きかえした時にアルバムで一番好きな曲となったし、前述の世間との乖離に悩む事も無くなった。〈イミテーションの木の下を 少年が飛び跳ねている それを見た誰かの顔がほころぶ〉〈情熱も夢も持たない張りぼての命だとしても こんなふうに誰かをそっと癒せるなら〉
満足度★★★★☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]

「Happy Song」
フジテレビ系『めざましテレビ』2012年度テーマソング。中学時代はほぼ毎日観ていた(というかとりあえずつけていた)『めざましテレビ』だが高校~大学と上がっていくにつれて観なくなってしまったのでこの曲もタイアップとしては聴いた事が無い。タイトル通りハッピーでポップな雰囲気全開のサウンドだが、〈目紛るしく変わっていく世界に ちょっと足がすくんでしまいそうな近頃〉〈まるで 前へ倣えの 右へ倣えの 優等生モード〉など苦しみの中にいる事前提の空元気という気もちょっとする。〈ちゃんと放送コード〉なんてフレーズは窮屈な現代ならではという感じがするし。個人的にこのアルバムは前年の震災を受けて、今だからこそハッピーなポップスど真ん中のミスチルをやろう!という観念で作られたような気もするのだがこの曲はまさにその核となったナンバーなのではないかと思う。
満足度★★★☆☆
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]



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5th配信限定シングル「REM」
2013年5月29日
映画『リアル~完全なる首長竜の日~』主題歌。00年代以降では最も激しいサウンドが展開するロックナンバー。ミスチル史上最も激しかった曲というと恐らく「#2601」(7thアルバム『DISCOVERY』収録)が挙げられると思うんだけどそれに匹敵するか超えているかも…。何より衝撃なのは限界ギリギリに設定されたその超高音シャウトで殆ど誰だか分からないような勢い。歌う度に喉壊れるんじゃないかコレ?前アルバムのまったりさと180度異なる方向性で初めて聴いた時はただただビックリした。本来ならあまり好きなタイプの曲では無いんだけど、攻めのミスチルを見れた!という事実が嬉しく割かし好印象な一曲。
満足度★★★★☆
18thアルバム『REFLECTION



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6th配信限定シングル「放たれる」
2014年5月24日
映画『晴天の霹靂』主題歌。これぞ小林武史という感じの重厚バラード。ミスチルのバラードというと高音多用のイメージがあるがコレは割とキーが抑え目。それ故かどこか仄暗いバラードという感じで、発表当時からそこまで好きな曲にはなっていない。

リマスタリングを施した音源が五か月後の35thシングル「足音~Be Strong」にC/Wとして収録され一応CD化は果たした。しかし翌年のアルバム『REFLECTION』ではUSBアルバムの{Naked}のみに収録された為、CDオリジナルアルバムには未収録であるシングルとなった。これは2005年の「ヨーイドン」以来9年ぶり(バージョン違い等を除く)。
満足度★★★☆☆
18thアルバム『REFLECTION』{Naked}のみ

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35thシングル「足音~Be Strong」
2014年11月19日 初登場2位 初動11.5万枚 売上17.5万枚 登場25週
フジテレビ系ドラマ『信長協奏曲』主題歌。デビュー以来初、プロデューサー小林武史が不参加のセルフプロデュース作品という革命的な一曲。00年代後半からのオーバープロデュースに辟易していたファンからするとまさに待望の結果となった訳である。2010年代に入ってからもそこまで脱コバ派では無かったものの前作のあまりにまったりした作風に危機を感じていた当時の僕としてもこれは喜ばしい展開だった。

楽曲の方は地に足をつけた感じのミディアムロック。コバタケ時代と比べるとそこそこエレキギターが目立ちサウンドがザックリしている感じがする。ストリングスも入ってはいるがあくまで主役はバンドであり侵食という感じは全く無い。このとき既に次回作『REFLECTION』の制作は進んでいたらしく、桜井曰く「どの曲をシングルで最初に出すか凄く迷った」との事だがこの一歩一歩踏みしめていく実直な感じがまさに(ミスチルの)独り立ちを表していて先行シングルにピッタリだったと思う。
満足度★★★★☆
18thアルバム『REFLECTION

C/W「放たれる」
同年5月の配信限定シングルのリマスタリングバージョン。

C/W「Melody」
コーセー『エスプリーク』CMソング。こちらの編曲には小林武史も参加。キラキラしたポップナンバーでミスチルにしては珍しく季節感があり、リリースされた年末時期になると聴きたくなる。ただ歌詞では〈見飽きたこの街が クリスマスみたいに光る〉と、あくまで〈クリスマスみたいに〉と言っているだけでクリスマスそのものを歌っているとは言い難いが…。タイトル通りメロディーがポップで良く、当時からA面以上に(初セルフプロデュースに踏み切ったミスチルには申し訳ないけど…)好みな一曲である。
満足度★★★★☆
18thアルバム『REFLECTION

初セルフプロデュースの他にこのシングルにはもう一つトピックがある。それは94年の「innocent world」から30作連続続いていたシングルチャート1位記録が今作で途切れたという事。連続1位記録というとデビューから続きギネスにもなっているKinKi Kids、またはデビューからでは無いものの獲得数歴代1位のB'z辺りが取り上げられがちだが、地味にミスチルもコツコツシングル1位を積み上げていた(アルバムでは2000年に最盛期の浜崎あゆみに敗れ2位になっているが)。かつてならばミスチルが1位を逃すというのは「一つの時代の終わり」だとかうたわれたのだろうけど、音楽の聴き方、楽しみ方が多様化し選択肢がCDだけでは無いこの時代に、CDのみに絞った限定的なチャートで一喜一憂する必要は無い(現代のCDは最早ファンアイテムの一つという捉え方で良い気が)。

最後に、この時1位だったSexy Zoneのシングルが初回・通常・ショップ盤・ミュージックカードetc計20種で発売されていた事もあってどうしてもネット上の印象としてミスチル=正義、Sexy Zone=悪、みたいになりがちだが曲の価値と売り方というのは別モノでは無いか?と思う。複数売りだから楽曲も問答無用で駄曲、みたいな風潮には疑問を感じる。



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「fantasy」
{Naked}のトップバッターを飾るロックナンバーで、リリースよりも半年程前からBMWのCDソングとしてオンエアされていた。その時点では特に良いとも悪いとも思っていなかったんだけどアルバム発売後{Naked}を再生して一発目に流れてきたこのガツンとしたギターサウンドに魅了され衝撃を受けた。中々にキャッチーなメロディーでもあるが歌詞の面では〈想像を超えた猟奇殺人さえ今や日常 ドキュメンタリー〉や〈7人の敵と吠える犬を撃ち殺して逃げた〉などギョッとするフレーズも見られる。{Drip}では「未完」にトップバッターを譲り9曲目に収録されたが(これはこれでインスト「Reflection」の後という目立つ位置ではあるが)、やはりこの曲は一曲目が似合うと思うしトップにある事でアルバム全体の印象をも引っ張り上げる強烈なパワーがあると感じる。
満足度★★★★★
18thアルバム『REFLECTION

「蜘蛛の糸」
流れるようなメロディーが美しささえ感じさせるバラードナンバー。どこか落ち着きはらったような雰囲気で大人のバラードという感じがする。このアルバムには他にシングル級のリード曲が多いので地味なポジションではあるがとても良い曲。アルバムジャケットの由来はこの曲からなのだろうか…?
満足度★★★★☆
18thアルバム『REFLECTION

「進化論」
日本テレビ系『NEWS ZERO』テーマソング。生きる事の意味と進化論を結び付けて歌い上げるミディアムナンバー。ニュース番組のタイアップだけあって真面目で淡々とした空気を纏っておりかなり地味な印象だが、「Starting Over」「未完」と共に25周年の配信限定ベストに選出された。正直この曲を選ぶなら「fantasy」を収録した方が良かったんじゃないかと思うんだけど…このちょっとお堅い感じがミスチルっぽい、という事でベスト選出に至ったのだろうか…?
満足度★★★☆☆
18thアルバム『REFLECTION

「幻聴」
アルバム内で屈指とも言える程にミスチルらしい、ミスチルっぽさ全開の王道ポップナンバー。タイトルだけ見た時点ではC/Wでよくあるような複雑で鬱屈した曲なのかなと思っていたのだが良い意味で予想を裏切られた。夜明け前みたいな幻想的なイントロの時点で何だかもうこれぞミスチル!という感じだし突き抜けたサビのキャッチーさも絶品。どなたかがブログで書いていた表現を勝手に丸パクリお借りするけど「fantasy」「Starting Over」「未完」そしてこの曲は『REFLECTION』四天王と言うべき圧倒的存在感である。
満足度★★★★★
18thアルバム『REFLECTION

「Starting Over」
映画『バケモノの子』主題歌。天から光が射すようなロックバラード。元々はドラマ『信長協奏曲』主題歌として制作が進められていたが頓挫し、結果主題歌となった「足音~Be Strong」を元にして再度作り直されたという経緯があるらしい。そう思って聴くと「足音~Be Strong」の兄弟ソング…というかむしろ「足音~Be Strong」の発展形とも言える曲という感じがする。確かな名曲には違いないが当時の音楽番組で歌いまくっていた為やや飽きが来るのが早く、「fantasy」「幻聴」「未完」辺りと比べると聴く回数は少ない。
満足度★★★★☆
18thアルバム『REFLECTION

「未完」
{Drip}ではトップバッター、{Naked}では大トリを務めるハイテンションなロックナンバー。タイトルはミスチルはまだまだ未完成であり成長の途中なんだという意味が込められており、特に{Naked}ではラストという事で立ち止まらずに次のステージへ進んで行くんだ!というバンドの強い意志を感じる終わり方で最高。これからのMr.Childrenに存分に期待できる一曲であり個人的にもアルバム中最高の名曲であると思う。この時点でデビューから23年を超えており、普通なら守りに入っても全然おかしくないキャリアであるにも関わらずこの貪欲なまでの創作意欲、そして攻め様には恐れ入る。
満足度★★★★★
18thアルバム『REFLECTION

Naked(完全生産限定盤) Drip初回盤