Mr.Children 歴代アルバム感想 #3 ~2012-2020~
こんにちは、孤独なJ-POPファン、マー・田中(@kazeno_yukue)でございます。
この記事ではMr.Childrenの各アルバム感想・それぞれのおすすめ度を、発売順に記載してまいります。
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17th [(an imitation) blood orange]
2012年11月28日 売上約77万枚
▼収録曲
01.hypnosis/02.Marshmallow day/03.End of the day/04.常套句/05.pieces/06.イミテーションの木/07.かぞえうた/08.インマイタウン/09.過去と未来と交信する男/10.Happy Song/11.祈り~涙の軌道
17thアルバム『[(an imitation) blood orange]』。
シングル「祈り~涙の軌道/End of the day/pieces」(27万枚)、配信限定「かぞえうた」「hypnosis」収録。「Marshmallow day」は資生堂CM、「常套句」はフジテレビ系ドラマ『遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~』主題歌、「Happy Song」は『めざましテレビ』テーマとなっており発売前から世に出ていた曲が多く、タイアップ無しのまっさらな新曲は3曲のみだった。初回限定盤はPVを収めたDVDが付属。5月のベスト盤を含めて年間で3枚のアルバムリリースとなり、これは自身最多。
ジャケット色もそうだが、内容的にも非常に温かみのあるアルバム。もっと言ってしまうと、これでもかという程にまったりし過ぎたアルバムである。アップテンポな曲はせいぜい「Marshmallow day」「End of the day」「過去と未来と交信する男」位で、他は全てがまったり系ミディアムバラード。特に「常套句」から「インマイタウン」というアルバムの中核を担う部分がなんと5曲連続まったりソング。これはさすがに聴いていてダレる。
『HOME』や『SUPERMARKET FANTASY』の頃からファンの間で指摘されるようになっていたプロデューサー・小林武史(通称コバタケ)のオーバープロデュースについては、僕個人的にはそこまで気になってはいなかったのだが今作を聴いて初めて意識し、危機感を抱いた。1曲1曲のメロディーセンスはやはり強いので、アレンジがパターン化している、アルバム全体が一辺倒な感じになっているという点が一番の問題である気がするのだが…。
そんなわけで初聴の印象としてはリアルタイムで買ってきたこれまでのアルバムで最も低く、聴きかえした回数も多分最も少ない作品ではあるんだけど、セルフプロデュースに踏み切った次回作『REFLECTION{Naked}』を聴いた後に今作に戻るとまぁこういう一呼吸もあって良かったのかなとだいぶ寛容な捉え方を出来る様になった。
おすすめ度:C
18th REFLECTION{Naked}
2015年6月4日 売上約58万枚
▼収録曲
01.fantasy/02.FIGHT CLUB/03.斜陽/04.Melody/05.蜘蛛の糸/06.I Can Make It/07.ROLLIN’ ROLLING~一見は百聞に如かず/08.放たれる/09.街の風景/10.運命/11.足音~Be Strong/12.忘れ得ぬ人/13.You make me happy/14.Jewelry/15.REM/16.WALTZ/17.進化論/18.幻聴/19.Reflection/20.遠くへと/21.I wanna be there/22.Starting Over/23.未完
18thアルバム『REFLECTION{Naked}』。前作『[(an imitation) blood orange]』からおよそ2年7か月ぶりのアルバム。『{Naked}』と『{Drip}』による2形態での発売。
こちらの『{Naked}』は初のUSBアルバムとして全23曲が収録されたUSB(ハイレゾ〈24bit 96kHz/WAV〉、MP3〈320kbps〉)に加え、80ページに及ぶ写真集、オリジナルライナーノーツ&DEMO音源試聴QRコード、更に『{Drip}』の初回盤も付属した完全限定盤かつ上位互換。
シングル「足音~Be Strong」(17万枚)、配信限定シングル「REM」「放たれる」、カップリングから「Melody」を収録。
今作ではデビュー以来初となる単独セルフプロデュース楽曲が多数収録されている。これまで全面的に関わっていたプロデューサー・小林武史(通称コバタケ)との共同プロデュース作品は全23曲中6曲(『{Drip}』では14曲中5曲)に留まっている。但しキーボーディストとして参加している曲が他に2曲ある。また「忘れ得ぬ人」はアレンジが森俊之であり、Mr.Childrenと小林以外の人物が編曲に関わった初の楽曲である。
「すべてのMr.Childrenを聴いて欲しい」というバンドの意向により全23曲、トータル2時間近くに及ぶ超大作となった『{Naked}』。というかここまで来ると一つのアルバム作品として見るよりも、作り上げた曲を片っ端から詰め込んでいった言うなれば楽曲の集合体として捉えた方がしっくりくる。通して聴くには気力も時間も必要だし、作品としてのまとまり感も薄いんだけど個人的にはかなりの傑作。
それはやはり(全曲では無いとは言え)小林武史を離れセルフプロデュースへと移ったという事実が大きい。前作で感じた危機感や停滞感は完全に払拭された。特にこの『{Naked}』では「未完」がラストに配置されており、まだまだ立ち止まらずに次のステージへ向かって行くんだというバンドの勢いを感じる終わり方になっておりこれが最高。セルフプロデュースになった影響か、これまでに無かったような一風変わった作風の楽曲も盛り込まれていて曲調が幅広い。コバタケのオーバープロデュースに疑問を抱いていた往年のファン、またそうでない人でも十分に喜びと満足を感じられる内容だと思う。
結成から25年を過ぎても未だ衰えない貪欲なまでの創作意欲、そしてこれまでの実績から上がりに上がったハードルを軽々と飛び越えてくる圧倒的なクオリティは本当に素晴らしい。CDアルバム一作を曲順通りに通して聴くという習慣が薄くなってきている現在だからこそ、流れやコンパクトさを捨てたこのような作りを選んだのかもしれないが英断だったと思うし満足度は非常に高い。
おすすめ度:A+
18th REFLECTION{Drip}
2015年6月4日 売上約58万枚
▼収録曲
01.未完/02.FIGHT CLUB/03.斜陽/04.Melody/05.蜘蛛の糸/06.Starting Over/07.忘れ得ぬ人/08.Reflection/09.fantasy/10.REM/11.WALTZ/12.進化論/13.幻聴/14.足音~Be Strong
18thアルバム『REFLECTION{Drip}』。前作『[(an imitation) blood orange]』からおよそ2年7か月ぶりのアルバム。完全盤『REFLECTION{Naked}』と今作『REFLECTION{Drip}』による2形態での発売であり、『{Naked}』にも『{Drip}』の初回盤が付属している。
こちらの『{Drip}』は『{Naked}』から厳選した14曲で構成されるCDアルバムで曲順も組み替えられているが、「FIGHT CLUB」~「蜘蛛の糸」、「REM」~「幻聴」までの流れはそれぞれ同じになっている。「足音~Be Strong」のカップリングとしてCD化されている「放たれる」を除いて、この『{Drip}』に収録されていない8曲は現在未CD化。
シングル「足音~Be Strong」(17万枚)、配信限定「REM」、カップリングから「Melody」を収録。初回盤には約60分に及ぶレコーディング・ドキュメンタリーDVDが付属。
今作ではデビュー以来初となる単独セルフプロデュース楽曲が多数収録されている。これまで全面的に関わっていたプロデューサー・小林武史(通称コバタケ)との共同プロデュース作品は全14曲中5曲(『{Naked}』では23曲中6曲)に留まっている。また「忘れ得ぬ人」はアレンジが森俊之であり、Mr.Childrenと小林以外の人物が編曲に関わった初の楽曲である。
シングルとして発表されていた曲やそれに通じるシングル級の曲、メロディアスな歌モノ等で構成された『{Drip}』は所謂ミスチルらしいものを中心に構成、選曲されている。ただ完全盤である『{Naked}』を先に聴いた上で後にこの『{Drip}』を聴いたので当然と言えば当然かもしれないがやはり『{Drip}』だけではやや物足りないのではないかと感じてしまった。『{Drip}』はいわば選び抜かれた耳心地の良い曲達が集まっているわけだが、これだけではセルフプロデュースの手応えや作品制作にあたってミスチルが打ち出した挑戦心の全ては見えてこない。まぁこれまでずっと応援してきたようなファンは『{Naked}』を手に取るだろうし、レンタル等で『{Drip}』を手に取るライトファンの人々にはこれでも十分期待以上だと思わせる程のパワーはあるんじゃないかなとは思う。
おすすめ度:B+
19th 重力と呼吸
2018年10月3日 売上約44万枚
▼収録曲
01.Your Song/02.海にて、心は裸になりたがる/03.SINGLES/04.here comes my love/05.箱庭/06.addiction/07.day by day(愛犬クルの物語)/08.秋がくれた切符/09.himawari/10.皮膚呼吸
19thアルバム『重力と呼吸』。前作『REFLECTION』から3年4か月ぶりのリリース。
シングル「himawari」(16万枚)、配信限定「here comes my love」収録。2017年1月の「ヒカリノアトリエ」は未収録。またライブツアー等で先行披露されていた新曲「お伽話」「こころ」も収録されなかった。「ヒカリノアトリエ」はホールツアー『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』のために結成されたバンド・ヒカリノアトリエ(ミスチル4人にサポートを加えたメンバーの総称)による演奏となっていた故に、若干イレギュラーな立ち位置の曲という事で未収録になったと思われる。
USBアルバムという特殊な販売形態であった前作から一転し、今作はCD一種発売というシンプルさながら3週連続1位を獲得。年間ランキング4位となった。
23曲収録だった前作から一転して10曲収録というコンパクトさ。かと言って1曲1曲が重たいナンバーかというとそんな事は無く、セルフプロデュースらしい軽快なバンドサウンドが目立つ楽曲が多くて、アルバム全体の印象も軽やかな感じ。セルフになったからかバンドがこれまで以上に躍動しているのが伝わってくる。「海にて、心は裸になりたがる」や「day by day(愛犬クルの物語)」なんかはまるで若手バンドかと思う程の躍動感だ。ただ、リード曲「Your Song」や先行シングル「himawari」「here comes my love」辺りは従来のミスチルっぽい貫禄があるが、その他の曲は良くも悪くも軽い感じがする。良質なカップリングの集合体みたいな。過去アルバムのような大作感を期待して聴くと恐らく拍子抜けしてしまうかも。聴きやすさという点では歴代1位かもしれないが、もう少しガツンとしたものを聴きたいという欲求は残るアルバムだった。
おすすめ度:B
20th SOUNDTRACKS
2020年12月2日 売上約38万枚
▼収録曲
01.DANCING SHOES/02.Brand new planet/03.turn over?/04.君と重ねたモノローグ/05.losstime/06.Documentary film/07.Birthday/08.others/09.The song of praise/10.memories
20thアルバム『SOUNDTRACKS』。前作『重力と呼吸』から2年2ヶ月ぶり。元号が平成から令和に変わって初のアルバムとなる。
シングル「Birthday/君と重ねたモノローグ」(9万枚)、配信シングル「turn over?」収録。「Brand new planet」はフジテレビ系ドラマ『姉ちゃんの恋人』主題歌、「others」はキリンビールCMソング、「The song of praise」は情報番組『ZIP!』テーマソング。
ロンドンのRAK StudioとロサンゼルスのSunset Soundでレコーディングが行われた。海外でのレコーディングは2000年の9thアルバム『Q』以来。アルバム全曲を海外でレコーディングしたのは今作が初である。
初回限定盤AはCD+DVD、初回限定盤BはCD+Blu-rayが付属。こちらのCD・Blu-rayには「LIVE & Documentary of SOUNDTRACKS “MINE”」と「Documentary film」のMUSIC VIDEOが収録されている。通常盤はCDのみ。またキャリア初であるアナログ盤(初回生産限定)でもリリースされた。アルバム発表と同時にアルバム公式Twitterが開設、リリース週にはマイクロバス「SOUNDTRACKS号」が渋谷周辺を走る等の企画が実施された。
初動27万枚を売り上げ初登場1位を獲得。1990年代・2000年代・2010年代・2020年代の4つの年代でアルバム1位を獲得した事となる。2020年度年間アルバムチャート7位。翌2021年2月14日にはダウンロード・サブスクリプション配信が開始。週間DLランキングで初登場6位となり、翌週には浮上して1位を獲得した。
2018年の前作『重力と呼吸』と同じく10曲収録というコンパクトさ。セルフプロデュース1発目だった『REFLECTION』こそ全23曲という特大ボリューム(と言うよりもはや楽曲の集合体だった)だったけど、以降の2作がここまでスマートになるとは驚き。90年代~00年代は壮大さやボリューム感で持っていくアルバムが多かったイメージだけに、2020年現在のミスチルのモードはこういうコンパクトな感じなのだろう。
初の全曲海外レコーディングかつ、海外プロデューサーとの制作。この点を踏まえて聴くと、サウンド面で確かな奥深さや新鮮さを見出せなくもない。ここら辺は音楽通な方々ならばもっと刺さる部分があるのかも。僕は残念ながら「これが海外サウンドなのだ!」と聞き分けられる耳を持っていないもので、「何となくそう感じる」という所に留まってしまう。
先行CDシングル「Birthday」のあまりの軽やかさには衝撃を受けた(もうちょっとガツンとバンドが鳴っていて欲しいな…と)が、アルバム全体の印象は割かし悪くない。1曲目「DANCING SHOES」は過去曲でいうと「LOVE はじめました」系のダーティな曲で、トップバッターにこんな変わり種を持ってくるんだ!という構成がまず面白い。そこからリード曲「Brand new planet」に繋がると一気に視界が開ける。メロディーの強さで言うともはや過去には及ばないだろうけど、その分繰り返し聴く事で滲み出る味も確実にあると思う。『重力と呼吸』の感想では「もう少しガツンとしたものを聴きたい」と書いたんだけど、現在のミスチルがこういうコンパクト路線なのであればこちらも聴き方を変えようかなと思ったし、そうする事でもっと良さを見出せていける一作だろう。
僕としてはもう一つのリード曲とも言えるセツナバラード「Documentary film」が頭一つ抜けて良かった。シングル級のサビだし、この曲ならば従来のミスチルを感じられるというリスナーも多いのではなかろうか。この曲、単なるアルバム曲であるにも関わらず『CDTVクリスマススペシャル』『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE 2020』『第71回NHK紅白歌合戦』と年末大型歌番組で歌われまくったのが凄い。それほどミスチル(特に桜井さんか?)本人の力が込められた曲だという事だろう。
おすすめ度:B
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著者:マー・田中(@kazeno_yukue)
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