ZARD 歴代アルバム感想&おすすめ度 #2 ~2004-2016~
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止まっていた時計が今動き出した
2004年1月28日 売上約21万枚
▼収録曲
01.明日を夢見て(Album Mix Version)/02.時間の翼/03.もっと近くで君の横顔見ていたい/04.pray/05.出逢いそして別れ/06.止まっていた時計が今動き出した/07.瞳閉じて/08.さわやかな君の気持ち(Album Ver.)/09.愛であなたを救いましょう/10.天使のような笑顔で/11.悲しいほど 今日は雨でも
10thアルバム『止まっていた時計が今動き出した』。2001年の前作『時間の翼』以来、3年ぶりという長いインターバルを経ての新作となった。
シングル「さわやかな君の気持ち(Album Ver.)」(7万枚)「明日を夢見て(Album Mix Version)」(6万枚)「瞳閉じて」(4万枚)「もっと近くで君の横顔見ていたい」(5万枚)収録。「時間の翼」は前作表題曲のフルバージョンだがアレンジが大幅に変更されている。クイーンのベスト盤『クイーン ジュエルズ~ヴェリー・ベスト・オブ・クイーン~』(初動16万枚)に阻まれ最高順位は2位。坂井泉水が亡くなったタイミングである2007年6月には81位まで再浮上した。
今作収録の最古シングルである「さわやかな君の気持ち」のキャッチコピーが「ZARD第2章スタート」だった事もあり、アルバム全体も『時間の翼』期の迷いを抜け新たなフィールドに立ったようなスッキリしたイメージがある。『時間の翼』でもその兆候は見えていたが今作ではバックサウンドが非常に軽い。これは当時のGIZA studioの主流だったサウンドでありZARDもその時流に方向性を合わせたという感じだったのだろう。
僕がJ-POPを本格的に聴き始めたのが2002年だったのでアルバムでは今作からがリアルタイムだったのだが当時からそこまで好きな一作でも無い。当時の僕は『ZARD BEST The Single Collection~軌跡~』、『ZARD BEST~Request Memorial~』を中心に90年代のZARDを聴きまくり絶賛懐古中状態で、「昔の曲は最高だけど今の曲はイマイチ」という感覚を持ったまま今作を手にしたのも大きいだろう。収録シングルがどれも個人的にイマイチだった(「さわやかな君の気持ち」だけは後々好きになったが)というのもある。そのせいか現在聴いてもサウンドが薄味だなぁ~とか思ってしまいそこまでハマれない。新たなZARD像を打ち出したのは伝わるんだけどこれはこれでスッキリし過ぎ、おとなし過ぎという感じが…。ただそんな中でも往年のロックサウンドに近いものを感じる表題曲「止まっていた時計が今動き出した」は名曲だと思う。
おすすめ度:C+
君とのDistance
2005年9月7日 売上約15万枚
▼収録曲
01.夏を待つセイル(帆)のように/02.サヨナラまでのディスタンス/03.かけがえのないもの/04.今日はゆっくり話そう/05.君とのふれあい/06.セパレート・ウェイズ/07.Last Good-bye/08.星のかがやきよ/09.月に願いを/10.あなたと共に生きてゆく/11.I can’t tell/12.good-night sweetheart/13.君と今日の事を一生忘れない
11thアルバム『君とのDistance』。前作『止まっていた時計が今動き出した』から約1年8か月ぶり。
シングル「かけがえのないもの」(4万枚)「今日はゆっくり話そう」(3万枚)「星のかがやきよ/夏を待つセイル(帆)のように」(8万枚)収録。「Last Good-bye」は95年にFIELD OF VIEWに、「あなたと共に生きてゆく」は93年にテレサ・テンにそれぞれ歌詞提供した曲のセルフカバー(テレサ・テンと坂井泉水は両者ともこの曲を発表した2年後に40代で急死した)。2007年5月27日に坂井泉水が急逝したため、今作が最後のオリジナルアルバムとなった。その際は39位にまで再浮上。
先行シングル「星のかがやきよ/夏を待つセイル(帆)のように」で葉山たけしを起用(2000年以来)し、続けてアルバム曲でも多く彼を起用した影響かZARDらしい王道のバンドサウンドが展開。やはり前作や前々作のような薄味のトラックよりも俄然聴きごたえがある。年齢・キャリアを重ねたことで坂井さんのボーカルにも深みが増しており、大人なZARDを感じる事も出来る一作である(同時に高音がやや苦し気に聞こえるという面もあるが)。特に当時今作のテレビCMでも流れていた「君とのふれあい」はZARDの円熟味を非常に感じられる珠玉のバラードで名曲。全体的にメロディー、サウンド共に光る満足な一枚だ。
今作発売時はまさかこれが最後のオリジナルアルバムになるなんて思ってもいなかった…。坂井さんは翌06年に体調を崩し手術を受けるも、07年初頭には入院しながらアルバム制作に向けて作詞をしていたという事で、もしあんな事にならなければ一体どんな新作が届けられていたのか。今ではもう叶わぬ願いである。
おすすめ度:B+
Golden Best~15th Anniversary~
2006年10月25日 売上約94万枚
▼Disc 1 収録曲
01.Good-bye My Loneliness/02.眠れない夜を抱いて/03.IN MY ARMS TONIGHT/04.負けないで/05.君がいない/06.揺れる想い/07.もう少し あと少し…/08.きっと忘れない/09.この愛に泳ぎ疲れても/10.Oh my love/11.こんなにそばに居るのに/12.あなたを感じていたい/13.愛が見えない/14.サヨナラは今もこの胸に居ます
▼Disc 2 収録曲
01.マイ フレンド/02.心を開いて/03.Today is another day/04.Don’t you see!/05.永遠/06.My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて~/07.運命のルーレット廻して/08.Get U’re Dream/09.もっと近くで君の横顔見ていたい/10.今日はゆっくり話そう/11.星のかがやきよ/12.夏を待つセイル(帆)のように/13.ハートに火をつけて
3rdベストアルバム『Golden Best~15th Anniversary~』。
デビュー15周年記念でリリースされた2枚組ベストアルバム。デビューシングル「Good-bye My Loneliness」から、アルバム初収録となる当時の最新シングル「ハートに火をつけて」(2万枚)までを時系列でシングル中心にセレクト。全曲がクリス・ベルマンによってリマスタリングされている。初回特典としてCM集DVDが付属され、内容違いで「AQUA~Summer~」「CRYSTAL~Autumn to Winter~」「DREAM~Spring~」の3種類が存在。
翌2007年5月27日に坂井泉水が急死した為、今作が生前最後のアルバムリリースとなった。06年時点では45万枚程の売上だったが07年の逝去直後に需要が集中し300位圏外から一気にチャート3位まで急上昇。その翌週には2位に上がるなどのアクションを見せ07年にも更に45万枚近くを伸ばし、累計では90万枚を突破している。
今作発売後もシングルは出ているが、生前のリリースは2006年が最後だったので現在においてもオールタイムベストとして聴く事が出来る一作。25周年を迎えた2016年には今作を更に拡大したような最終奥義的4枚組ベスト『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』が出たがあちらは「季節」というコンセプトで楽曲が振り分けられているので、時系列順になっている今作の方がオールタイム感は強い。
デビューから95年にあたるDisc-1はセールス・人気共に最盛を極めていたからか最初期以外ほとんど隙間なくシングルが収録されている。対してDisc-2は99年~01年の試行錯誤期を筆頭に多くのシングルが抜けておりかなり駆け足になっている印象。とはいえZARDの活動を時系列で大まかに振り返るには現在でも十分オススメの一作である。クリス・ベルマンによるリマスタリングの効果でかなり派手で迫力のあるサウンドに仕上がっているので同じ曲でも99年の『ZARD BEST』2作とは結構印象が異なる。派手すぎるという意見もあるかもしれないが僕は好みだった。
おすすめ度:A
Golden Best~15th Anniversary~ / ZARD
Soffio di vento~Best of IZUMI SAKAI Selection~
2007年8月15日 売上約13万枚
▼収録曲
01.あの微笑みを忘れないで/02.黄昏にMy Lonely Heart/03.愛が見えない/04.サヨナラは今もこの胸に居ます/05.ひとりが好き/06.あなたに帰りたい/07.So Together/08.遠い星を数えて/09.遠い日のNostalgia/10.来年の夏も/11.かけがえのないもの/12.Boy/13.見つめていたいね
追悼セレクションアルバム『Soffio di vento~Best of IZUMI SAKAI Selection~』。『Brezza di mare~dedicated to IZUMI SAKAI~』と同時発売。アルバムタイトルはイタリア語で「風のそよぎ」の意。
坂井泉水が生前ファンクラブ会報で『LOVE & POWER』と題して自身の気に入っている曲を発表しており、それを中心に選曲された。ただ作品化にあたって所々坂井の選曲をスタッフが変更している(変更前の曲目では織田哲郎作曲のナンバーが3曲あったが全て削除・変更されている)。特典DVDとして「My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて~」「カナリヤ」を収録。公式サイトではディレクター寺尾広によるライナー・ノーツを見る事が出来る。徳永英明『VOCALIST 3』(初動11万枚)に阻まれ最高順位は2位。
セールス全盛期だった90年代中頃のアルバム・カップリング曲が中心。「Oh my love」「Forever you」「Today is another day」といったアルバム表題曲は選ばれておらず、あくまで有名曲・代表曲を省いた90年代ZARDをお届けするという感じのラインナップになっている。
ただ坂井さんが生前選んだ曲目のままでは弱いとスタッフが判断したのかビーイングが織田哲郎を嫌っているのか何なのか分からないけど商品化にあたっての差し替えは要らなかったんじゃないかなぁ…とも思う。坂井さん選曲の弱さを補完するにしても「愛が見えない」「サヨナラは今もこの胸に居ます」の2曲ではヒットシングルとはいえそこまでの訴求力は無さそうだし、前年の『Golden Best~15th Anniversary~』と思いっきり被ってしまっている。故に過去のベストやセレクション盤の存在を考えると微妙なラインナップではある。しかしまぁそれぞれの楽曲自体は素晴らしいものばかりだし追悼盤という事で被りとか取っ払ってZARDの名曲に浸った方が良いのかもしれない。僕は単純にこのラインナップ自体はかなり好きである。
おすすめ度:B
Soffio di vento~Best of IZUMI SAKAI Selection~ / ZARD
※幻のアルバム LOVE & POWER
2007年2月のファンクラブ会報において坂井泉水が「直感でバーッと」選んだという14曲は以下の通り。会報のジャケットに寄ると正式タイトルは『Izumi’s Selection LOVE & POWER from ZARD c/w and album』だったらしい。
01.あの微笑みを忘れないで/02.Today is another day/03.黄昏にMy Lonely Heart/04.ひとりが好き/05.あなたに帰りたい/06.Lonely Solidier Boy/07.So Together/08.愛は暗闇の中で/09.遠い星を数えて/10.愛しい人よ~名もなき旅人よ~/11.Forever you/12.I’m in love/13.来年の夏も
赤字は今作商品化に当たって差し替えられた曲。
Brezza di mare~dedicated to IZUMI SAKAI~
2007年8月15日 売上13万枚
▼収録曲
01.瞳閉じて/02.明日を夢見て/03.風が通り抜ける街へ/04.I’m in love/05.君がいない(B-version)/06.もう探さない/07.promised you/08.悲しいほど貴方が好き/09.君がいたから(di mare version)/10.止まっていた時計が今動き出した/11.さわやかな君の気持ち/12.少女の頃に戻ったみたいに/13.世界はきっと未来の中(di mare version)/14.いつかは…
追悼セレクションアルバム『Brezza di mare~dedicated to IZUMI SAKAI~』。『Soffio di vento~Best of IZUMI SAKAI Selection~』と同時発売。アルバムタイトルはイタリア語で「海風」の意。
坂井泉水を追悼してレコーディングスタッフが選曲した。「悲しいほど貴方が好き」(「カラッといこう!」と両A面 3万枚)がアルバム初収録の他、「明日を夢見て」「promised you」「さわやかな君の気持ち」もシングルバージョンでは初収録。また「君がいたから」「世界はきっと未来の中」は今作のみのニューミックスが施されている。特典DVDには「もう少し あと少し…」「眠り」を収録。『Soffio di vento~Best of IZUMI SAKAI Selection~』と同様に公式サイトでディレクター寺尾広によるライナー・ノーツを読む事が出来る。
この時点での既出ベスト盤には収録されていない曲が多く、更に割と後期の曲が多めに入っているというのが今作の特徴の一つだ。前年の15周年ベスト『Golden Best~15th Anniversary~』とはほぼ被っていないので『Golden Best~15th Anniversary~』の続きとして、もしくはDisc-3のような感覚で聴いてみても良いんじゃないかと思う。個人的にはこの時期の曲にあまり思い入れが無いので今作自体を聴く事は少ないんだけど、オリジナルアルバムでは大幅な改変が施されていた「さわやかな君の気持ち」のシングルバージョンが入っていたりするのはやはり大きい。後期中心とはいえ超初期の曲も置かれており若干違和感もあるが、ベスト盤だけを持っている人とかからしたら次に聴く1作として良いのでは。
おすすめ度:B
Brezza di mare~dedicated to IZUMI SAKAI~ / ZARD
ZARD Request Best~beautiful memory~
2008年1月23日 売上約22万枚
▼Disc 1 収録曲
01.グロリアス マインド/02.Ready,Go!/03.突然/04.君に逢いたくなったら…/05.ハイヒール脱ぎ捨てて/06.こんなに愛しても/07.二人の夏/08.明日もし君が壊れても/09.君とのふれあい/10.時間の翼/11.かけがえのないもの/12.揺れる想い(’07 Live Ver.)/13.永遠(’07 Live Ver.)/14.マイ フレンド(’07 Live Ver.)/15.Don’t you see!(’07 Live Ver.)
▼Disc 2 収録曲
01.息もできない/02.新しいドア~冬のひまわり~/03.Forever you/04.あの微笑みを忘れないで/05.不思議ね…/06.淡い雪がとけて/07.フォトグラフ/08.hero/09.Love is Gone/10.Season/11.雨に濡れて/12.心を開いて(’07 Live Ver.)/13.少女の頃に戻ったみたいに(’07 Live Ver.)/14.君がいない(’07 Live Ver.)/15.負けないで(’07 Live Ver.)
4thベストアルバム『ZARD Request Best~beautiful memory~』。
2007年6月25日からファン投票で収録曲を募集し、50万通以上の応募の中からの上位30曲を2枚組でリリース。シングルでは「グロリアス マインド」(8万枚)がアルバム初収録。過去のベスト盤やセレクション盤と被っている有名曲は坂井泉水追悼ライブ「What a beautiful memory」での音源となるライブバージョンを収録。また「明日もし君が壊れても」「息もできない」「hero」「Love is Gone」は葉山たけしによるリアレンジが施されている。
本来は07年秋に発売を予定されていたが制作の都合で延期になったという。初回生産分には「ZARD 17th Anniversary カレンダー」、また永続仕様ではDVDと全ディスコグラフィー付ライナーノーツが付属。DVDの内容は07年ライブの秘蔵映像でありこの一部は第58回NHK紅白歌合戦でも放送された。
投票するファンが過去のベスト盤との被りを気にしたのか、大部分がアルバム曲やカップリング曲で構成されるファン向けなベスト盤に仕上がった。「負けないで」を筆頭とする有名シングル群はライブ音源に回されているので1999年の『ZARD BEST』2作や06年の『Golden Best~15th Anniversary~』を持っていても被りを気にせず聴く事ができる。ファン人気の高い曲が中心なので最初に聴く1作という感じでは無く、体裁的に『Golden Best~15th Anniversary~』の次に今作へ進むという流れが自然なのかなと思う。
個人的にはファン投票ベストとしては99年の『ZARD BEST~Request Memorial~』が好き過ぎるので今作のラインナップが発表された時も「そこまで…」という感じだったのだが、「Love is Gone」等知らなかった良曲に触れる事ができたのは結果的に良かった(リアレンジで結構変わっているらしいので原曲は未だ知らないのだけど)。どうせ投票やるなら思い切って『Golden Best~15th Anniversary~』収録曲を選曲対象外にする位はしても良かった…ようにも思うけどコアな選曲で2枚組となるとそれはそれで「選び過ぎ」とか言われただろうしこれで良かったのかな。
おすすめ度:B
ZARD Request Best~beautiful memory~ / ZARD
ZARD Forever Best~25th Anniversary~
2016年2月10日 売上約18万枚
2017年2月8日(早春) 売上約0.2万枚
2017年5月17日(初夏)
2017年8月9日(盛夏)
2017年11月15日(秋冬)
▼Disc.1 早春 収録曲
01.Don’t you see!/02.マイ フレンド/03.この愛に泳ぎ疲れても/04.Good-bye My Loneliness/05.WAKE UP MAKE THE MORNING LAST~忘れがたき人へ~/06.君に逢いたくなったら…/07.息もできない/08.今すぐ会いに来て/09.ハイヒール脱ぎ捨てて/10.Forever you/11.明日を夢見て/12.翼を広げて/13.愛は暗闇の中で featuring Aya Kamiki
▼Disc.2 初夏 収録曲
01.星のかがやきよ/02.夏を待つセイル(帆)のように/03.君がいない/04.心を開いて/05.揺れる想い/06.素直に言えなくて featuring Mai Kuraki/07.Oh my love/08.雨に濡れて/09.I still remember/10.来年の夏も/11.あなたに帰りたい/12.愛が見えない/13.果てしない夢を(ZYYG,REV,ZARD&WANDS featuring 長嶋茂雄)
▼Disc.3 盛夏 収録曲
01.かけがえのないもの/02.遠い星を数えて/03.風が通り抜ける街へ/04.DAN DAN 心魅かれてく/05.突然/06.Today is another day/07.Season/08.眠れない夜を抱いて/09.こんなにそばに居るのに/10.永遠/11.サヨナラは今もこの胸に居ます/12.眠り/13.あの微笑みを忘れないで
▼Disc.4 秋冬 収録曲
01.もう少し あと少し…/02.Get U’re Dream/03.IN MY ARMS TONIGHT/04.運命のルーレット廻して/05.少女の頃に戻ったみたいに/06.きっと忘れない/07.こんなに愛しても/08.promised you/09.GOOD DAY/10.My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて~/11.グロリアス マインド/12.あなたを感じていたい/13.負けないで
5thベストアルバム『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』。
キャッチフレーズは「ZARDと、もう一度出逢う」。デビュー25周年を記念しデビュー日ピタリにリリースされ、全楽曲の中から季節をテーマに早春・初夏・盛夏・秋冬に振り分けられた4枚組。
坂井泉水死去後に出されたシングル「翼を広げて/愛は暗闇の中で featuring Aya Kamiki」(8万枚)「素直に言えなくて featuring Mai Kuraki」(5万枚)がアルバム初収録。
選曲は長戸大幸と寺尾広が中心となって行われた。島田勝弘による最新デジタル・リマスタリングが施され、高音質仕様のBlu-spec CD2を初採用。楽曲数が多くなるほど音質のビットレートを下げる必要が生じる為、本来3枚組で収まる収録時間の所を音質を考慮して4枚組にし、各ディスクに余裕を持たせてあるという。坂井泉水本人が亡くなり新しい音源が生まれない今、手元にある全てを出し尽くしたという事で、名目上最後のベストアルバムであるとされている。
リリースから1年後の2017年には「早春」「初夏」「盛夏」「秋冬」と名付けられた4種の期間限定パッケージが季節ごとに追加リリースされた。
有名シングル群は勿論のことアルバム曲の選出でも過去のベスト盤・セレクション盤に選ばれた曲が大半を占め、これまでのベスト・セレクションアルバムのおいしい所を全て盛り込んだ一般向けとしては最終奥義的な内容のベストアルバム。その割に全盛期を過ぎた2000年以降の曲が10曲と少なめに抑えられており、「ZARDと、もう一度出逢う」というキャッチコピーの通りに90年代の最盛期に聴いていた人が改めてZARDの名曲達に触れるための一作という立ち位置がしっくり来る。
全52曲というボリューム故に初心者が今作を入り口にしようとしても1曲1曲の色が埋もれる感じもあり、ZARDへの入り口としてなら未だ99年の『ZARD BEST The Single Collection~軌跡~』・『ZARD BEST~Request Memorial~』セットか、06年の『Golden Best~15th Anniversary~』の方が入りやすいかなとも思う。ただ今さら過去ベストを手に取る位ならこの機会に今作でドカッとZARDを押さえてしまおうという考え方も決して悪くは無いけどね。本当に一般的に思われるZARDのおいしい所は全て盛り込んである。4枚組全52曲を一気に聴くには時間も気力も必要でありそういう聴き方は推奨されない。ファンとしては選曲・構成どうこうは一旦置いといて、所持しているというだけでも満足な気持ちである。
個人的に、ベストアルバムの選曲を「季節別」とか「曲調別」とかなにがしかのテーマ別に振り分けるやり方はあまり好きでは無い。結局ふわっとしたテーマ故にどうしても「この曲がココ…?」みたいな論争が起きてしまうし、聴きたい曲がどのディスクに入っているのか分からなくなってしまう。今作も季節別(発売月日順)という振り分け故に一見作品としての見映えは良く感じるもののどこかゴチャゴチャな印象を抱いてしまった。リリース年月日順にシングルを並べ、同じく初出順にアルバム曲を挟み込んでいくという年表スタイルが最も分かりやすく、その歌手の歴史を追っていくような気持ちで聴けるので好みだ。そういう意味ではオールタイムベストとしては今作よりも『Golden Best~15th Anniversary~』の方がオールタイム感(?)が強いと思う。
島田勝弘によるリマスターはかなり好感触。06年の『Golden Best~15th Anniversary~』はクリス・ベルマンによるド派手なリマスターが施されておりかなり音圧が激しく、人によっては耳が疲れるのではないかという位のものだったので賛否を呼んだ(僕としてはアレはアレで好みだったけど)。今作のリマスターは原曲の旨味そのままに、往年の名曲達を綺麗にクリアに蘇らせましたという感じで気持ちが良い。今作を聴いた後だと99年の『ZARD BEST』2作は若干音がザラついているように感じてしまう。今作を一発目に聴いてしまうと、もう過去のベスト盤には戻れないかもしれない。
おすすめ度:A+
ZARD Forever Best~25th Anniversary~ / ZARD
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著者:マー・田中(@kazeno_yukue)
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