小松未歩 歴代アルバム感想
謎
1997年12月3日 初動約9万枚 売上約38万枚
▼収録曲
01.Dream’in Love/02.おとぎ話/03.謎/04.傷あとをたどれば/05.輝ける星/06.alive/07.錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう/08.青い空に出逢えた/09.この街で君と暮らしたい/10.君がいない夏/11.MY SOUL
1stアルバム『謎』。
1997年5月に日本テレビ系アニメ『名探偵コナン』オープニングテーマ「謎」でデビュー。同年12月の今作で初のアルバム発売となった。
シングル「謎」(32万枚)「輝ける星」(4万枚)に加えカップリングから「傷あとをたどれば」を収録。他にWANDS、辻尾有紗、FIELD OF VIEW、DEENに提供したセルフカバー4曲も収録している。中でも「この街で君と暮らしたい」は小松本人のデビュー前(97年4月)に提供しており実は作家デビューの方が先だった。
ジャケットやレーベル面には『謎? miho komatsu』と疑問符が付いているが、公式では付かないとされる。またジャケット写真の色鉛筆にちなんで販促用の色鉛筆セットが作られ、音楽雑誌やラジオ等の懸賞用として配布された。
小松未歩といえば『名探偵コナン』初期の歌姫である。当時彼女を聴いていた人はもれなく『コナン』も観ていたと言っても過言では無いだろう。当然わたくしマー(当時小学校低学年)も『コナン』主題歌として小松未歩に初めて触れ、母親に頼み込んで「謎」や「願い事ひとつだけ」の8cmシングルを買ってもらったものだ。
ビーイング歌手はあまりメディア露出しない戦略がとられる(ZARDなんかが筆頭)が、そうは言っても『ミュージックステーション』とか一部の番組にはちょこちょこ出る人もいた。ただ小松未歩の場合はテレビ・ラジオは勿論ライブも完全に一切無し。まさに存在自体が「謎」のアーティストであったのも神聖化させた一要因であったのだろう(またタイアップ先のアニメと合ってたんだよねぇ世界観が…)。親しみやすさ・距離の近さみたいなものがウリとなってきた令和の時代では、このような神聖化ブランド(?)は厳しくなってきているのでまさに90年代だったからこその歌手の一人であろうと思う。デビュー時から一貫してボーカルに「ダブルトラック」という録音技術が用いられている(常に歌声が重なって聞こえるアレ)ので地声も分からんし…。
小松未歩自体を知ったのは小学生の頃だが、アルバムを買ってしっかりと聴くようになったのは高校生の頃。J-POPに興味を持つようになってから「そういえば小松未歩をしっかり聴いてみよう」と思い立ちふと買ったのが今作であったがこれが名盤で衝撃を受けた。ビーイングらしい90年代王道サウンドに、奇をてらわない真っ直ぐなメロディーが乗る一作。これは素晴らしい。1曲目の「Dream’in Love」のキラキラさからもう心を奪われる。2ndシングル「輝ける星」は今作を聴くまで知らなかったがやはり名曲で、『コナン』主題歌に選ばれていれば「謎」級のヒットにはなっていただろうから惜しい。セルフカバー4曲も良く、特に「この街で君と暮らしたい」のピュアさに胸打たれ、原曲よりもこのセルフカバーバージョンの方が好きな位だ。全曲ハズレ無しの超オススメ盤ですので是非。
おすすめ度:A+
小松未歩 2nd ~未来~
1998年12月19日 初動20万枚 売上約60万枚
▼収録曲
01.未来/02.anybody’s game/03.チャンス/04.氷の上に立つように/05.手ごたえのない愛/06.あなたのリズム/07.1万メートルの景色/08.涙/09.静けさの後/10.願い事ひとつだけ/11.Deep Emotion
2ndアルバム『小松未歩 2nd ~未来~』。前作『謎』から1年ぶり。
シングル「願い事ひとつだけ」(29万枚)「anybody’s game」(9万枚)「チャンス」(14万枚)「氷の上に立つように」(16万枚)に加えカップリングから「1万メートルの景色」を収録。また「手ごたえのない愛」はDEENへ歌詞提供した楽曲のセルフカバー。「1万メートルの景色」は日本テレビ系『鳥人間コンテスト』98年度テーマソングだった。
表記は無いものの「anybody’s game」はミックス変更が施され、「氷の上に立つように」はイントロがアコースティックギターで始まる等シングル時とは異なる手入れが加えられている。
SPEEDの『MOMENT』(初動125万枚)、globeの『Relation』(31万枚)に次いで週間チャート初登場3位を記録。これはシングル「チャンス」と並んで自身最高順位となる。また累計売上は60万枚に到達し、小松未歩の全作品の中で最大のヒット作となった。
「願い事ひとつだけ」「氷の上に立つように」がどちらも日本テレビ系アニメ『名探偵コナン』主題歌、「チャンス」がフジテレビ系『めざましテレビ』テーマソングだったりとシングルに強いタイアップが目白押しだった事もあり60万枚の大ヒット。セールス的な全盛期はこの時期である。故に楽曲の方も前作以上の勢いに満ちていて素晴らしい。今回は元GARNET CROWの古井弘人が全編曲を担当しているがこれが90年代ビーイングサウンド王道という感じで僕には刺さりまくりだ。ちなみに前作『謎』では明石昌夫(B’z、ZARD、WANDS、T-BOLAN等々の編曲で知られるアレンジャー)も編曲で関与していたが、彼は98年にビーイングと契約終了したので今作には未参加のようだ。
名バラード「未来」でどっしり幕を開け、圧巻のシングル3連発で確実に心を掴まれる。特に「anybody’s game」は「謎」を彷彿とさせる小松未歩必殺のミステリアス疾走系ナンバーで最高。タイアップは違ったけど、この曲も『コナン』主題歌に合っていたと思う。後半のアルバム曲もシングルに負けず劣らずのクオリティだしクライマックスで登場する「願い事ひとつだけ」はもう説明不要の代表曲。高校生の頃に前作『謎』とセットで買って以来大好きな一枚。『謎』と並んでまたしても全曲ハズレ無しの超オススメ盤ですので是非。
おすすめ度:A+
小松未歩 3rd ~everywhere~
2000年2月16日 初動約7万枚 売上約10万枚
▼収録曲
01.最短距離で/02.BEAUTIFUL LIFE/03.As/04.風がそよぐ場所/05.sickness/06.No time to fall/07.Holding, Holding on/08.BOY FRIEND/09.さよならのかけら/10.夢と現実の狭間/11.雨が降る度に
3rdアルバム『小松未歩 3rd ~everywhere~』。前作『小松未歩 2nd ~未来~』から約1年2ヶ月ぶり。
Amemura O-town Recordからビーイングが新たに設立したGIZA studioへ移籍して初のアルバム。元々はシングル「風がそよぐ場所」リリース直後(99年8月)に発売する予定だったが製作上の都合により延期となっていた。
シングル「さよならのかけら」(5万枚)「最短距離で」(3万枚)「風がそよぐ場所」(5万枚)に加えカップリングから「BOY FRIEND」を収録。「As」は4か月後に10thシングル「あなたがいるから」カップリングとしてリアレンジリカットされた(「As<everyplace ver.>」)。「最短距離で」はシングル時とはテンポが変更されたアルバムバージョンとなっている。
シングル売上が下がった事に比例し今作の売上も前作から約6分の1に激減してしまった。
小松未歩の印象はやはりアニメ『名探偵コナン』の印象と共にあるので、『コナン』タイアップが含まれていない今作以降は一気にイメージが無くなる。厳密にはこの後に10thシングル「あなたがいるから」が最後の『コナン』タイアップとなる訳だけど、世間的には前作『小松未歩 2nd ~未来~』で小松未歩のイメージが止まっている人も多いだろう。僕なんかもまさにそうで、高校生の頃に1st・2ndと一緒に中古で買ってきたものの元々知ってる曲が無かった今作だけ極端に聴いた回数が少ない。
改めて聴くと今作は一気にアレンジが大人しくなったように感じる。1st・2ndで全面的に関与していた古井弘人も相変わらず参加しているし、今回はZARDやWANDSの編曲で知られるビーイングの代表アレンジャー・葉山たけし、主に愛内里菜等に編曲で関与していた尾城九龍、後にビーイングを離脱しday after tomorrowのギタリストとしてavexからデビューする北野正人等、多彩なメンバーの名前があるが大人しめという方向で統一はされている。メロディーの良さは相変わらず流石ではあるけど、やはり1st・2ndに比べると全体的にパンチが無いというのが正直なところ。売上が下がったのも無理はない。余談だが「雨が降る度に」のサビのメロディーが海援隊の「贈る言葉」に激似だと思うのだが共感してくれる人は居るだろうか…。
ちなみに「最短距離で」はシングルバージョンとはリズムアレンジが全く異なる。今作収録バージョンは王道ストレートなリズムになっているが、シングルはまるでリミックス音源かのような跳ねたアレンジである(ベスト盤『小松未歩ベスト~once more~』で初めてシングルバージョンを聴いて発覚した)。これに関しては今作収録の真っ直ぐな王道リズムの方が格段に好き。このアルバムバージョンを聴けるという価値が今作にはある。
おすすめ度:C+
小松未歩 4 ~A thousand feelings~
2001年3月7日 初動約4万枚 売上約6万枚
▼収録曲
01.君の瞳には映らない/02.あなたがいるから/03.at him!/04.ただ傍にいたいの/05.I don’t know the truth/06.Love gone/07.ともだち以上/08.regret/09.幸せのかたち/10.哀しい恋/11.Hold me tight
4thアルバム『小松未歩 4 ~A thousand feelings~』前作『小松未歩 3rd ~everywhere~』から約1年1か月ぶり。
シングル「あなたがいるから」(6万枚)「君の瞳には映らない」(2万枚)「Love gone」(2万枚)に加え、カップリングから「哀しい恋」を収録。「あなたがいるから」は映画『名探偵コナン 瞳の中の暗殺者』主題歌で、これが自身最後のコナンタイアップ曲。
今作から小松未歩自身がプロデュースも担当するようになった。またシングル・アルバム通じて最後のトップ10入りとなった。
収録シングル3作は「恋愛3部作」であり、「君の瞳には映らない」が未来(あした)の恋、「あなたがいるから」が現在(いま)の恋、「Love gone」が過去(きのう)の恋に位置するという。
コナンタイアップだった「あなたがいるから」のみ池田大介編曲で他は全て大賀好修の編曲。前作で一気に大人しめのアレンジに変貌したが今作も引き続き物静かなアルバムという印象は変わらない。2015年頃に初めて聴いた時はあまりの地味さに途中で聴くのをやめてしまったんだけど10年以上経って冷静に聴いてみたら免疫が付いてたのか純粋にメロディーの良さを堪能できた。シングル3作は勿論、アルバム曲も良く特に「regret」は名曲だと感じたね。確かに1stや2ndの勢いを期待して聴くとズッコケるだろう。少し寂しい事を言うけど、1st・2ndとは別物という意識で聴くのが正しい楽しみ方だと思った。(2025/5/2更新)
おすすめ度:B
小松未歩 4 ~A thousand feelings~ / 小松未歩
小松未歩 5 ~source~
2002年9月25日 売上約3万枚
▼収録曲
01.gift/02.愛してる…/03.とどまることのない愛/04.commune with you/05.足搔き/06.約束の海/07.style of my own/08.さいごの砦/09.dance/10.でも忘れない/11.愛の唄
5thアルバム『小松未歩 5 ~source~』。前作『小松未歩 4 ~A thousand feelings~』から約1年半ぶり。
シングル「とどまることのない愛」(2万枚)「さいごの砦」(2万枚)「愛してる…」(1万枚)「dance」(1万枚)に加え、カップリングから「愛の唄」「足掻き」を収録。
前作に引き続き大賀好修が多くの編曲を手掛けておりアレンジは大人しめなんだけどメロディーはかなり良い。「とどまることのない愛」や「style of my own」「さいごの砦」辺りは特に素晴らしいメロディーだと感じる。大人しすぎるアレンジのせいで(「せい」って言っちゃうけど)メロの良さに気づきにくいのが難点。
3rd以降なんでこんな静かなアレンジになっちゃったんだろう。「謎」「願い事ひとつだけ」など初期のパワフル編曲を手掛けた古井弘人も参加(「style of my own」)してるけど、そんな古井氏までも大賀アレンジに飲み込まれたかのように大人しい編曲になってて謎なのよね。メロディーは素晴らしいんだから、せめてもうちょっと派手なアレンジで聴きたいなと感じる。売上的にすっかりコナンブランドも消え去り、数少ないファンしか聴いてないゾーンに突入しちゃったけどこのアレンジの影響は少なからずあると思うよね。(2025/5/28更新)
おすすめ度:B
WONDERFUL WORLD~SINGLE REMIXES & MORE~
2002年11月27日 初動約1万枚 売上約2万枚
▼収録曲
01.輝ける星(M-oZ filter mix)/02.anybody’s game(night clubbers mix)/03.あなたがいるから(lightin’ grooves never wanna stop mix)/04.dance(DJ ME-YA’s all night remix feat.RIP TRAP)/05.願い事ひとつだけ(moon light night mix)/06.風がそよぐ場所(Bootee’s electro dub mix radio edit)/07.さよならのかけら(shooting star mix)/08.愛してる…(thick mist. thick mix)/09.さいごの砦(DJ ME-YA’s boogie down remix)/10.Love gone(version:esta nevando)/11.最短距離で(Cay Taylan’s paradise diskko dub mix radio edit)/12.謎(HIROSHI’s secret of life mix)/13.氷の上に立つように(night clubbers mix)/14.チャンス(S9 remix radio edit)/15.とどまることのない愛(hagy mix)/16.君の瞳には映らない(lightin’ grooves light on the disco mix)
リミックスアルバム『WONDERFUL WORLD~SINGLE REMIXES & MORE~』。5thアルバム『小松未歩 5 ~source~』から約2か月ぶり。17thシングル「mysterious love」と同時発売。
デビュー曲「謎」から当時の最新シングル「dance」までの全16曲をリミックスして収録した自身唯一のリミックスアルバム。
2000年前後は浜崎あゆみやELTらエイベックス勢がリミックスアルバムを乱発してたし、その流れに乗ってかビーイングでもT-BOLANやPAMELAH等も出してた。浜崎あゆみに至ってはシングルのカップリングに大量のリミックスを入れてほぼリミックスミニアルバム化させたりと、00年前後のJ-POP界は何故かリミックスがブームになってたんだよね。
ただまぁ僕としてはリミックスってのは未だ楽しみ方が分からない。歌自体が解体されちゃってるのも多いし。血や生命を感じないというか。マニアックな人なら別アレンジとして楽しめるのかもしれないけど。作業BGMとして流しとく位しか用途が無いかなと思う。突如ラッパーが出てくるのとかは面白かったけどね。申し訳ないがガッツリ聴こうとしても退屈さが勝る。『WONDERFUL WORLD』っていう妙に爽やかなタイトルなのも合ってない気がするしな(関係無いけど同年のミスチルと被っとるやんけ)。基本1度聴いたらもう充分。
唯一ラストの「君の瞳には映らない」に関しては原曲より良かったね。大人しいアレンジだった原曲と比べて派手なサウンドになってて、今作で唯一聴きごたえのあるトラックだった。ある意味この曲の真の魅力を引き出すことに成功してる。あと同曲ではごく一部オーバーダビングが外れて、小松さんの無加工の純正歌声(?)が聴ける瞬間がある。なぜかちょっとドキッとしたよね。「これが小松さんの本当の声か!」って。(2025/5/29更新)
おすすめ度:D
WONDERFUL WORLD~SINGLE REMIXES & MORE~ / 小松未歩
小松未歩 6th ~花野~
2003年9月25日 初動約1万枚 売上約2万枚
▼収録曲
01.mysterious love/02.ふたりの願い/03.通り雨/04.楽園/05.明日を待てずに/06.大空へ/07.渇いた叫び/08.君さえいれば/09.チャンス~RECHANCE~/10.Last Letter/11.特別になる日/12.僕にあずけて/13.私さがし
6thアルバム『小松未歩 6th ~花野~』。
リミックスアルバム『WONDERFUL WORLD~SINGLE REMIXES & MORE~』から約10か月ぶり。オリジナルアルバムとしては『小松未歩 5 ~source~』から約1年ぶり。
シングル「mysterious love」(1万枚)「ふたりの願い」(1万枚)「私さがし」(1万枚)に加え、カップリングから「特別になる日」「通り雨」を収録。「大空へ」「渇いた叫び」はFIELD OF VIEWに、「君さえいれば」はDEENに提供した楽曲のセルフカバー。
前2作は連続で大賀好修一辺倒の編曲陣だったけど、今作はGARNET CROWの岡本仁志や古井弘人、また徳永暁人、小林哲ら総勢7人もアレンジャーが参加している。だけど全体的に大人しめのアレンジという印象は相変わらずなんだよね。微かな風でもかき消えそうな印象というか…。更には前作よりメロディー面でも弱くなっちゃった感じがある。2ndアルバム以来となるセルフカバー3連発は楽曲自体間違いなく名曲なので、この3曲こそもう少し派手なアレンジで聴いてみたかったね。いっそ原曲と同じ音源でも良いよ(笑)。(2025/6/1更新)
おすすめ度:C+
※随時更新中
著者:船橋スイカ(@funabashisuika)
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