YUKI アルバム感想 #1 ~2002-2007~
こんにちは、孤独なJ-POPファン、マー・田中(@kazeno_yukue)でございます。
ここではYUKIの各アルバム感想と、それぞれのおすすめ度を発売順に綴ってまいります。
1st PRISMIC
2002年3月27日 約29万枚
01.眠り姫/02.the end of shite/03.66db/04.サヨナラダンス/05.惑星に乗れ/06.Rainbow st./07.I U Mee Him/08.忘れる唄/09.愛に生きて/10.プリズム/11.ふるえて眠れ/12.呪い
1stアルバム『PRISMIC』。
2001年3月8日にJUDY AND MARYを解散。その後ガールズバンド・Mean Machine(YUKIはドラマーとして参加していたようだ)を経て、2002年2月に1stシングル「the end of shite」をリリース本格的なソロ活動を開始。今作にはシングル「the end of shite」(12万枚)「プリズム」(8万枚)を収録。6月に「66db」(1万枚弱)がリカットされた。9曲目「愛に生きて」の演奏はYUKIが親交の深いスピッツが担当している。
日暮愛葉が作詞作曲編曲を手掛けたソロデビューシングル「the end of shite」こそJUDY AND MARYを彷彿とさせるパンキッシュなナンバーだったが、直後の2ndシングル「プリズム」は清らかな空気溢れるバラードポップス。更にシングルカットされた「66db」はロックともポップとも形容し難い複雑な一曲。この様にシングル3曲とも方向性がバラバラなので、まだこの時点ではYUKIソロをどういうスタイルでやっていこうか模索していた段階だったと思われる。
アルバム全体もどこか目線が定まっていないような、何でもありのごっちゃ混ぜという雰囲気でソロ活動への不安感みたいなものが滲み出ているように思う。現在の感覚で聴くとこれもYUKIらしいと思えるけど、ジュディマリ解散直後の当時は「異常に地味になったな…」と感じた人が多かったかもしれない。ただ個人的に地味なイメージだった「プリズム」が今作の流れで聴くと非常に染みてきて、やっぱり風格を持っている曲なんだなと気付かされたのが収穫だった。
おすすめ度:C
2nd commune
2003年3月26日 約9万枚
01.SWELLS ON THE EARTH/02.泣きそうだ/03.Good Times/04.ストロベリー/05.ロックンロールスター/06.スタンドアップ!シスター/07.ハミングバード/08.センチメンタルジャーニー/09.ファンキー・フルーツ/10.恋人よ(version)/11.コミュニケーション/12.砂漠に咲いた花
2ndアルバム『commune』。
シングル「スタンドアップ!シスター」(3万枚)「センチメンタルジャーニー」(2万枚)「ハミングバード」(1万枚)に加えC/Wから「恋人よ」を収録。YUKIのアルバムの中で唯一トップ10入りを逃し、前作『PRISMIC』から約20万枚の売上減となった。
前作の延長戦のような一作。シングル3曲は前作収録のシングルよりも個性派ポップスという方向性である程度定まって来たようには感じられるけど、それでもアルバム全体通しての印象は地味。ただCMソングにもなっていた「ファンキー・フルーツ」、スネオヘアー作曲の「コミュニケーション」など、地味ながらアルバム曲にも結構耳に残る曲があるとも感じた。結局このアルバムで一番インパクトがあったのはジャケットの大量増殖したYUKIだったなぁ…。
おすすめ度:C
3rd joy
2005年2月23日 約34万枚
01.舞い上がれ/02.JOY/03.ハローグッバイ/04.Walking on the skyline/05.スウィートセブンティーン/06.サイダー/07.AIR WAVE/08.WAGON/09.ブレーキはノー/10.キスをしようよ/11.ティンカーベル/12.愛しあえば/13.Home Sweet Home
3rdアルバム『joy』。
シングル「Home Sweet Home」(5万枚)「ハローグッバイ」(4万枚)「JOY」(6万枚)に加えC/Wから「AIR WAVE」「舞い上がれ」を収録。先行シングル「JOY」がヒットし、今作もここまでで最大ヒット、自己最高のロングセラーとなった。
8thシングル「ハローグッバイ」で作曲に招いた蔦谷好位置をYUKIは気に入ったようで以降蔦谷好位置とのタッグが続くようになる。特に9thシングル「JOY」はデモの段階でYUKIに「こんな曲を10年待っていた!」と唸らせた程だったらしいし、明確にソロの方向性を決定づけた代表曲になった。確かにこれまでは”元ジュディマリのYUKI”というイメージだったのがこの辺りから”ソロシンガー・YUKI”としてアイデンティティを持ち始めたように思う。
僕がYUKIを聴き始めたのが次回作『Wave』からなので今作は後追いで聴いたんだけど、やはり開花し始め・夜明け前の感はある。「JOY」は不朽の名曲だと思うしやはり蔦谷好位置と出会った今作は大いなる転機だったのだろう。
おすすめ度:C+
4th Wave
2006年9月6日 約35万枚
01.長い夢/02.メランコリニスタ/03.ドラマチック/04.裸の太陽/05.ふがいないや/06.バースディ/07.ヘイ!ユー!/08.あおぞら/09.You’ve got a friend/10.ユメミテイタイ/11.夏のヒーロー/12.歓びの種
YUKIの4thアルバム『Wave』。
シングル「長い夢」(8万枚)「ドラマチック」(7万枚)「歓びの種」(6万枚)「メランコリニスタ」(4万枚)「ふがいないや」(3万枚)に加えC/Wから「裸の太陽」「夏のヒーロー」を収録。初回限定盤は「歓びの種」「メランコリニスタ」「ふがいないや」のPVを収録したDVDが付属。前作『joy』から初動が10万近く跳ね上がり、オリジナルアルバムでの最大ヒット作となった。
オリジナルアルバムで自身最大ヒット、更に収録シングルの売上アベレージも高く、YUKIソロの代表作はどのアルバムかというと今作になるんじゃないかと思う。「ハローグッバイ」で起用し始めた蔦谷好位置との関係が最も密だった時期であり収録シングル5作は全て蔦谷が作曲を手掛けている。一癖ある個性派ポップスという要素に抜群のキャッチーさがプラスされ、ニッチな音楽ファン層にも一般リスナーにも幅広く受ける盤石の体制が出来上がった。ソロ初期の迷いの時期を抜け、ここへ来て完全にYUKIというブランドが確立された感がある。
YUKIの代表曲でパッと思い浮かぶのはこの時期の曲達だし、アルバム冒頭をシングル曲で固めてあるので非常に聴きやすい。後半のアルバム曲も全盛期特有の勢いで一気に聴けるしラストに雄大バラード「歓びの種」と配置も絶妙。「歓びの種」が映画『タッチ』主題歌、「ドラマチック」「ふがいないや」がアニメ『ハチミツとクローバー』テーマと大型タイアップを連続で手掛けていた頃でもあり、聴けば何となく耳に残っている曲も多いと思う。内容、構成共に素晴らしく、YUKIのオリジナルアルバムで最もおすすめなのは今作。所謂全盛期を切り取った一作なので、ある意味ではベスト盤以上に入門に適したアルバムだと感じる。
かく言う僕もYUKIソロを聴くようになったきっかけは今作だった。当時高校生でJUDY AND MARYを聴きあさっていた僕は「YUKIがソロで売れてきてるけど、ジュディマリの方が何倍もエエわい。世間は分かっとらんのぅ」と、半ば意固地になってYUKIソロを拒絶していたのである。しかしある日まとまった数で友人が貸してくれたCD群の中に今作が含まれており、何気な~く聴いたら1曲目の「長い夢」であっさり心を掴まれてしまった。未だによく聴き返す一枚だし一番好きなアルバムは今作である。
おすすめ度:A+
1stベスト five-star
2007年10月3日 約36万枚
2009年9月2日(Blu-spec CD 完全生産限定盤)
01.the end of shite/02.プリズム/03.66db/04.スタンドアップ!シスター/05.センチメンタルジャーニー/06.ハミングバード/07.Home Sweet Home/08.ハローグッバイ/09.JOY/10.長い夢/11.ドラマチック/12.歓びの種/13.メランコリニスタ/14.ふがいないや/15.星屑サンセット/16.ビスケット
1stベストアルバム『five-star』。
ソロ活動5周年を記念したシングルコレクション。この時点までに発売されていたシングル15曲が発売順に収録されており前作『Wave』以降のシングル「星屑サンセット」(4万枚)がアルバム初収録。更にボーナストラックとして配信限定シングル「ビスケット」を収録。
初回生産限定盤はWhite・Blackの2種類からなる三方背BOXの特殊パッケージとなっており、「ビスケット」のMV+配信限定コンテンツ「ゆきんこ around the world」全12話を収録したDVDに加え48ページの撮り下ろし写真集が付属。また初回盤・通常盤共に全曲分のセルフライナーノーツが封入されている。初動は前作よりも下がったものの、初のベストという事も手伝いロングセラーを記録し累計では自身最大のヒット作となった。2009年には完全生産限定のBlu-spec CD仕様でリリースされた。
2002年のソロデビューから2007年時点までのシングルを纏めてある。長らくYUKIの入門盤として重宝されてきた作品だったが、2012年にソロ10周年を記念した2枚組ベストアルバム『POWERS OF TEN』がリリースされ、配信限定「ビスケット」以外の15曲が今作と重複している。なので現在では「ビスケット」を回収するためのアルバムという趣が強く、ベストアルバムとしての役割は基本的に終えている。
初期のYUKIを切り取ったシングルコレクション。前半~中盤はソロをどのようにやっていこうか本人・スタッフ共に迷っていたようで、パンキッシュだったりバラードだったりよく分からん不可思議な(?)曲だったり、方向性が定まっていなかったように感じる。蔦谷好位置を招いた「ハローグッバイ」が転換期で、以降は独自性とキャッチーさを兼ね備えた名曲が連発されYUKIブランドというものが作り上げられていく印象。YUKIがソロとして自我を確立してゆく過程をヒストリー的に追える1枚である。
2012年に今作の拡大版といえる『POWERS OF TEN』がリリースされており今作の価値は失われたように見えるが、ボーナストラックの「ビスケット」だけは今作でしか聴けない。この「ビスケット」はYUKIらしさの全てが詰まったようなミディアムポップで素晴らしい名曲なので、『POWERS OF TEN』を先に入手した人も忘れずに今作をチェックしてみて欲しい。
おすすめ度:B+
著者:マー・田中(@kazeno_yukue)
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