サザンオールスターズ 歴代アルバム感想&おすすめ度 #2 ~1995-2018~
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限定生産ベスト HAPPY!
1995年6月24日 売上約69万枚
▼DIsc-1 HAPPY! ONE WITH YOUR LOVER 収録曲
01.マンピーのG★SPOT/02.おいしいね~傑作物語/03.シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA/04.女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)/05.希望の轍/06.栞のテーマ/07.亀が泳ぐ街/08.みんなのうた/09.我らパープー仲間/10.ナチカサヌ恋歌/11.勝手にシンドバッド/12.メリージェーンと琢磨仁/13.さよならベイビー/14.女呼んでブギ/15.遥かなる瞬間/16.いとしのエリー
▼Disc-2 HAPPY! TWO IN THE CAR 収録曲
01.涙のキッス/02.匂艶 THE NIGHT CLUB/03.ゆけ!!力道山/04.フリフリ’65/05.C調言葉に御用心/06.忘れられたBig Wave/07.ニッポンのヒール/08.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)/09.鎌倉物語/10.Brown Cherry/11.チャコの海岸物語/12.YOU/13.最後の日射病/14.東京サリーちゃん/15.クリスマス・ラブ(涙のあとには白い雪が降る)/16.Ya Ya(あの時代を忘れない)
▼Disc-3 HAPPY! THREE IN YOUR ROOM 収録曲
01.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN/02.OH,GIRL(悲しい恋のスクリーン)/03.海/04.MY FOREPLAY MUSIC/05.愛は花のように(Ole!)/06.HAIR/07.素敵なバーディー(NO NO BIRDY)/08.悲しみはメリーゴーランド/09.夕方 Hold On Me/10.ポカンポカンと雨が降る(レイニー ナイト イン ブルー)/11.EMANON/12.愛する女性(ひと)とのすれ違い/13.真夏の果実/14.LOVE SICK CHICKEN/15.開きっ放しのマシュルーム/16.慕情
ベストアルバム『HAPPY!』。1989年の『すいか SOUTHERN ALL STARS SPECIAL 61SONGS』に続く限定生産ベスト。アルバムとしては1992年の『世に万葉の花が咲くなり』から約2年9ヶ月ぶり。
デビュー曲「勝手にシンドバッド」から当時の最新シングル「マンピーのG★SPOT」までのシングル・カップリング・アルバムから全48曲をセレクト。選曲はすべて桑田佳祐自身によるものであるという。全曲リマスタリング。
洗剤のパッケージを思わせるケース仕様で特製サザンハッピ・ハッピーステージパスが封入されている。完全予約限定生産であったため店頭に並ぶ事は無かったらしい。初登場1位を獲得したが2週目には11位、3週目には圏外となった。
1995年時点でのヒット曲・代表曲は概ね揃えられているが今作の持ち味はやはりカップリング・アルバムからの選曲だろう。かなりマニアックな曲が多数選ばれているが、有名曲の隙間に紛れるように入っている事で割とスンナリ聴く事が出来る。単体では良さを感じにくかったであろうカップリング曲とかも今作の流れで聴くとサザンの幅・引き出しの多さとして面白く受け止められたのは収穫だった。時系列では無いので各ディスクそれぞれ独立したアルバム作品のように聴けるというのもポイント。
2010年代以降の感覚だと3枚組・4枚組のベストアルバムというものは普通だが、95年当時では物凄いテンコ盛り楽曲集という印象だったのではないだろうか。一般発売では無く限定生産にしたのもあくまでファン向けアイテムという意識で制作されたからだろうし、今作をギュッと纏めて外向けにしたのが3年後の『海のYeah!!』なんだろうなという感じはする。現在ではそこまで必聴盤というワケでは無いんだけど、80年代~90年代前半サザンのよりコアな部分に触れるキッカケにはなると思うので中古やレンタルで運良く見かけたら手に取る事をオススメする。
おすすめ度:B
12th Young Love
1996年7月20日 売上約249万枚
2008年12月3日(リマスター盤) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ/02.ドラマで始まる恋なのに/03.愛の言霊~Spiritual Message~/04.Young Love(青春の終わりに)/05.Moon Light Lover/06.汚れた台所/07.あなただけを~Summer Heartbreak~/08.恋の歌を唄いましょう/09.マリワナ伯爵/10.愛無き愛児~Before The Storm~/11.恋のジャック・ナイフ/12.Soul Bomber(21世紀の精神爆破魔)/13.太陽は罪な奴/14.心を込めて花束を
12thアルバム『Young Love』。1995年の限定生産ベストアルバム『HAPPY!』から約1年1ヶ月ぶり。オリジナルアルバムとしては1992年の前作『世に万葉の花が咲くなり』から約3年10ヶ月ぶりであった。
シングル「あなただけを~Summer Heartbreak~」(113万枚)「愛の言霊~Spiritual Message~」(139万枚)「太陽は罪な奴」(38万枚)に加えカップリングから「恋のジャック・ナイフ」を収録。前作以降の「エロティカ・セブン EROTICA SEVEN」「素敵なバーディー(NO NO BIRDY)」「クリスマス・ラブ(涙のあとには白い雪が降る)」「マンピーのG★SPOT」の4シングルは『HAPPY!』に収録されていた為か今作には未収録となった。「恋の歌を唄いましょう」は原由子ボーカル曲。
96年当時に制定された海の日に発売を合わせた為、チャート集計上不利な土曜日リリースとなり実質2日間のみの集計だったが難なく初登場1位を獲得。ミリオンシングル2作を収録し、CDセールスが最高潮を迎えていた時期だった事もあり自身初のダブルミリオンを突破する大ヒットを記録。オリジナルアルバムでは自己最高売上となった。
デビュー30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
前作とは異なり今作はセルフプロデュース、さらにバンド感を打ち出したロックかつキャッチーなナンバーが多く抜群に聴き応えがある。『海のYeah!!』や『バラッド3~the album of LOVE~』と被る曲も多いものの、今作でしか聴けないオリジナル曲がこれまた名曲揃いなので絶対に無視できない一作。ざっくりとしたバンドサウンドが光る「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」やサザンバラードの王道「ドラマで始まる恋なのに」、一発録りされたという「汚れた台所」等は魅力満載。大ヒットシングルも多数入ってるし曲順もバランスも非常に優れた一作だと思う。まさに売れ線王道で攻めたという感じ。最初に聴くオリジナルアルバムとしてもかなり良いのでは。文句なしの名盤。
おすすめ度:A+
ベスト 海のYeah!!
1998年6月25日 売上約359万枚
▼DISC-1 SEA SIDE 収録曲
01.勝手にシンドバッド/02.いとしのエリー/03.C調言葉に御用心/04.栞のテーマ/05.いなせなロコモーション/06.夏をあきらめて/07.チャコの海岸物語/08.匂艶 THE NIGHT CLUB/09.鎌倉物語/10.Bye Bye My Love(U are the one)/11.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)/12.海/13.みんなのうた/14.希望の轍/15.忘れられたBig Wave
▼DISC-2 SUNNY SIDE 収録曲
01.真夏の果実/02.YOU/03.シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA/04.涙のキッス/05.さよならベイビー/06.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN/07.素敵なバーディー(NO NO BIRDY)/08.そんなヒロシに騙されて/09.マンピーのG★SPOT/10.あなただけを~Summer Heartbreak~/11.Moon Light Lover/12.太陽は罪な奴/13.恋のジャック・ナイフ/14.愛の言霊~Spiritual Message~/15.平和の琉歌
20周年記念ベストアルバム『海のYeah!!』。同98年に静岡県渚園で行われた野外ライブを楽しんでもらうためのアルバムという位置づけで、厳密には夏をテーマにした企画ベスト。この時点までのヒット曲・人気曲がほぼ時系列でセレクトされている。
完全限定生産ベスト『すいか』『HAPPY!』を除くと、今作にてアルバム初収録となったシングルは「いなせなロコモーション」(16位 11.1万枚)「チャコの海岸物語」(2位 58.2万枚)「みんなのうた」(2位 31.6万枚)「エロティカ・セブン EROTICA SEVEN」(1位 174.0万枚)「素敵なバーディー(NO NO BIRDY)」(3位 51.0万枚)「マンピーのG★SPOT」(4位 51.3万枚)。「平和の琉歌」は97年にライブビデオの特典シングルとして発表されていた曲。
1998年の年間ランキングでは244万枚と前作『Young Love』と同程度の売上に終わっていたが、ヒット曲を一括で押さえられる今作の需要は高くその後も毎年夏になるとチャートを上昇するという現象が起こり続け未だに売上を伸ばしている。現在では累計350万枚を突破しており2枚組以上の作品では最大の売上、更に歴代アルバムチャート10位につけている。また初動100万枚以上でかつ登場週数100週以上を記録した初の作品。2018年に続編となる『海のOh, Yeah!!』がリリースされた際には週間チャートトップ10に返り咲いた。
出だしから「勝手にシンドバッド」、次が「いとしのエリー」という事でまさに王道中の王道ラインナップ。サザンの代表的な曲を一括で押さえられる決定盤として、発売から20年以上経った現在でも不動の地位を確立しているベストアルバム。この時点までの有名曲がズラリ揃っていてサザン入門編としてはこの上なく最適だ。サザン初心者はまず今作を聴く事をオススメする。
これ以外のベストはバラッドシリーズや限定生産のモノしか出ていないので純粋な選曲で手軽に入手できるベストとなると今作と20年後の続編『海のOh, Yeah!!』のみとなる(まぁ今作にも一応「夏」というテーマはあるんだけどね)。しばらくは今作→「TSUNAMI」回収のため『バラッド3~the album of LOVE~』へ進むというのが初心者王道コースだったが、『海のOh, Yeah!!』にも「TSUNAMI」が収録されたので現在では今作→『海のOh, Yeah!!』コースが最も手っ取り早いと思う。
ただし今作はあくまで「サザンのオイシイとこ取り」なアルバムである為、シングルを網羅しているという訳では無い。かと言ってオリジナルアルバムを1から辿ってもまだ未収録シングルが多く存在するので、シングル曲コンプリートを目指すのであれば2005年の一斉再発シングル(「TSUNAMI」まで)にも手を伸ばし穴埋めしなければならないため少々厄介だ。出来ればコンプリート・シングルコレクションを出して欲しい所ではあるがそれは贅沢な要望か…。
おすすめ度:A+
13th さくら
1998年10月21日 売上約96万枚
2008年12月3日(リマスター盤) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.NO-NO-YEAH/GO-GO-YEAH/02.YARLEN SHUFFLE~子羊達へのレクイエム~/03.マイ フェラ レディ/04.LOVE AFFAIR~秘密のデート~/05.爆笑アイランド/06.BLUE HEAVEN/07.CRY 哀 CRY/08.唐人物語(ラシャメンのうた)/09.湘南SEPTEMBER/10.PARADISE/11.私の世紀末カルテ/12.SAUDADE~真冬の蜃気楼~/13.GIMME SOME LOVIN’ ~生命果てるまで~/14.SEA SIDE WOMAN BLUES/15.(The Return of)01MESSENGER~電子狂の詩~<Album Version>/16.素敵な夢を叶えましょう
13thアルバム『さくら』。ベストアルバム『海のYeah!!』から約4ヶ月ぶり、オリジナルアルバムとしては1996年の『Young Love』以来約2年3ヶ月ぶりであった。
シングル「01MESSENGER~電子狂の詩~」(5位 23.9万枚)「BLUE HEAVEN」(5位 21.5万枚)「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」(4位 58.8万枚)「PARADISE」(4位 19.5万枚)に加えC/Wから「SEA SIDE WOMAN BLUES」「私の世紀末カルテ」「CRY 哀 CRY」を収録。「01MESSENGER~電子狂の詩~」は大幅なアレンジが施され、タイトルも「(The Return of)01MESSENGER~電子狂の詩~<Album Version>」に変更されている。「唐人物語(ラシャメンのうた)」は原由子ボーカル曲。
同年6月にリリースしたベストアルバム『海のYeah!!』が244万枚(当時)程のヒットを記録していたものの、その後のシングルで大きなヒットが出なかった事もあってか今作は1985年の『KAMAKURA』以来のミリオン割れとなってしまった。また2001年にギター大森が脱退したため、サザン6人編成での最後のオリジナルアルバムとなった。
デビュー30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
レコーディングに3000時間を費やしたという力作であり、マニアックかつヘビーなサウンドが炸裂する一作。桑田佳祐本人が「やりたい事を好き放題やった」と語っている通り、売れる事を意識せずに自分達がやりたい事を突き詰めたような内容になっている。前作『Young Love』とは対照的に一般的なサザンイメージからは離れたロック色の強い楽曲が見受けられるが、作り込まれているだけあって完成度は非常に高い。「YARLEN SHUFFLE~子羊達へのレクイエム~」や「爆笑アイランド」等はこの時期のサザンでしか出来なかった良曲。またやりたい放題とはいえ『バラッド3~the album of LOVE~』に選出された曲も多く、従来のイメージ通りのナンバーもしっかり聴ける。今作の後は大森が脱退し、大衆ポップス路線に向かうのでロックバンド・サザンが聴ける最後のアルバムでもある。そういう意味で貴重な一作だ。
おすすめ度:A
3rdバラッドベスト バラッド3~the album of LOVE~
2000年11月22日 売上約291万枚
▼Disc 1 収録曲
01.真夏の果実/02.女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)/03.さよならベイビー/04.逢いたくなった時に君はここにいない/05.希望の轍/06.忘れられたBig Wave/07.せつない胸に風が吹いてた/08.涙のキッス/09.OH, GIRL(悲しい胸のスクリーン)/10.素敵なバーディー(NO NO BIRDY)/11.冷たい夏/12.HAIR/13.慕情/14.クリスマス・ラブ(涙のあとには白い雪が降る)
▼Disc 2 収録曲
01.愛の言霊~Spiritual Message~/02.BLUE HEAVEN/03.あなただけを~Summer Heartbreak~/04.Moon Light Lover/05.愛無き愛児~Before The Storm~/06.心を込めて花束を/07.唐人物語(ラシャメンのうた)/08.SAUDADE~真冬の蜃気楼~/09.湘南SEPTEMBER/10.TSUNAMI/11.夏の日のドラマ/12.LOVE AFFAIR~秘密のデート~/13.SEA SIDE WOMAN BLUES/14.素敵な夢を叶えましょう
3rdバラッドベスト『バラッド3~the album of LOVE~』。1982年の『バラッド ’77~’82』、1987年の『BALLADE 2 ’83-’86』に続くバラッドシリーズ第3弾。
1989年~2000年の期間(アルバムでいうと9thアルバム『Southern All Stars』から13thアルバム『さくら』)の全楽曲の中からバラード中心にセレクト。完全限定生産ベスト『すいか』『HAPPY!』を除くと、シングルでは「クリスマス・ラブ~涙のあとには白い雪が降る~」(3位 66.7万枚)「TSUNAMI」(1位 293.6万枚)がアルバム初収録だった。また「冷たい夏」「夏の日のドラマ」は今作にしかアルバム収録されていない。ギター大森隆志が在籍していた6人編成サザンで発売された最後の作品である。
同年1月にリリースされ300万枚に迫る自身最大ヒットとなっていた「TSUNAMI」の影響・収録もあって初動136万枚という自身最高の数字を記録。その後も『海のYeah!!』と双璧をなす現役ベスト盤としてサザンに動きがあるたびにチャートに復活する驚異的なロングヒットを続け、現在『海のYeah!!』に次ぐ自身2番目のヒットアルバムとなっている。最終ランクインは2018年9月。
最大ヒット曲「TSUNAMI」が約18年のあいだ今作にしかアルバム収録されていなかったというポイントがあったので『海のYeah!!』と並ぶ2大現役ベスト盤として長年君臨していた一作。「TSUNAMI」をアルバムで聴くには今作を入手するしかなかったので、デビューから98年までの代表曲を『海のYeah!!』で揃え、次に「TSUNAMI」を回収するために今作を入手する、というのが長年サザン入口の王道であった。2018年にはプレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』がリリースされそちらにも改めて「TSUNAMI」が収録されたため、「TSUNAMI」が聴けるアルバムという意味での価値は薄まった。『海のYeah!!』は9曲、『海のOh, Yeah!!』は7曲が今作と被っている。
僕自身、中学時代に初めて買ったサザンのアルバムが今作だったし思い入れの深い一作。「涙のキッス」や「愛の言霊」など有名なヒットシングルも聴けるし、何よりサザンのバラードが集められているという事でクオリティーは安心盤石。80年代に発売されたバラッド2作は現在の感覚で聴くと地味さが拭えないのに対し、第3弾である今作は90年代メガヒット期のバラード集なのでキャッチーさ・聴きごたえ共に素晴らしい。『海のYeah!!』『海のOh, Yeah!!』それぞれに被っている曲が多いため今後サザンの入り口として今作が選ばれる事は少なくなっていくとは思うけど、バラードベストとしての普遍的な魅力は十分にある作品だ。
できたら今作の直前にリリースされていたシングル「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」も収録してほしかった。今作のコンセプトにピッタリの名曲だったし、『海のOh, Yeah!!』にもスルーされ、未だアルバム未収録シングルとして取り残されているのでそこだけが残念。
おすすめ度:A
バラッド3~the album of LOVE~ / サザンオールスターズ
14th キラーストリート
2005年10月5日 売上約113万枚
2008年12月3日(リマスター盤) 売上約0.2万枚
▼Disc 1 収録曲
01.からっぽのブルース/02.セイシェル~海の聖者~/03.彩~Aja~/04.JUMP/05.夢と魔法の国/06.神の島遥か国/07.涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~/08.山はありし日のまま/09.ロックンロール・スーパーマン~Rock’n Roll Superman~/10.BOHBO No.5/11.殺しの接吻~Kiss Me Good-Bye~/12.LONELY WOMAN/13.キラーストリート/14.夢に消えたジュリア/15.限りなき永遠の愛
▼Disc 2 収録曲
01.ごめんよ僕が馬鹿だった/02.八月の詩/03.DOLL/04.別離/05.愛と欲望の日々/06.Mr.ブラック・ジャック~裸の王様~/07.君こそスターだ/08.リボンの騎士/09.愛と死の輪舞/10.恋人は南風/11.恋するレスポール/12.雨上がりにもう一度キスをして/13.The Track for the Japanese Typical Foods called “Karaage” & “Soba” ~キラーストリート(Reprise)/14.FRIENDS/15.ひき潮~Ebb Tide~
14thアルバム『キラーストリート』。オリジナルアルバムとしては1998年の前作『さくら』から7年ぶり、バラードベスト『バラッド3~the album of LOVE~』からは5年ぶりのアルバムとなった。
シングル「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」(1位 74.2万枚)「彩~Aja~」(1位 27.9万枚)「君こそスターだ/夢に消えたジュリア」(1位 45.8万枚)「愛と欲望の日々」(1位 37.2万枚)「BOHBO No.5/神の島遥か国」(3位 25.9万枚)に加え、カップリングから「雨上がりにもう一度キスをして」「恋人は南風」「FRIENDS」「DOLL」「LONELY WOMAN」を収録。これらは全て桑田佳祐のソロ活動を経て大々的にサザンを再開した2003年以降のシングルであり、活動休止以前のシングル「イエローマン~星の王子様~」「TSUNAMI」「HOTEL PACIFIC」「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」は未収録。「山はありし日のまま」「リボンの騎士」は原ボーカル曲。初回盤にはレコーディング風景が収められたDVD『FILM KILLER STREET』と桑田によるセルフライナーノーツが付属。
オリジナルアルバムでは96年の『Young Love』以来のミリオンセラーとなり、2枚組オリジナルアルバムのミリオンセラーは94年に発売されたB’z『The 7th Blues』以来史上2作目の快挙であった。
デビュー30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。当時オリジナル盤の発売から3年しか経っていなかった今作もしっかりラインナップに加わっており再発されている。
2000年に「TSUNAMI」を大ヒットさせてからはそれまでに見られていたようなマニアックな曲調のシングルは姿を消し、ひたすら売れ線王道全開のナンバーを連発するようになった。そして活動休止を経た03年以降のサザンが出した一つの答えであり集大成だったであろう2枚組の大作がこの『キラーストリート』である。まさに大衆的お祭りバンド・サザンのイメージのまま聴ける売れ線ポップスアルバム。03~05年のサザンをまとめて聴ける半ベスト盤としても機能しうる。シングルのキャッチーさは勿論のことアルバム曲にもシングルと遜色ないクオリティのナンバーが並んでいて非常に聴きやすい。個人的にもJ-POPに興味を持ってから初めて出されたサザンの新作アルバムだったので事で思い入れが大変深い一作。
一方でこうしたポップに振り切れた作風に対して賛否が巻き起こったのも事実であり、特に古くから追いかけている長く深いファンほど疑問を感じているようだ。同じ2枚組という事で85年の『KAMAKURA』と比較するファンも居るだろうし、デビューから80年代後半頃の挑戦的だったサザンをリアルタイムで見てきたファンには今作はポップ一辺倒に感じられてしまうのかもしれない。こればかりはそのリスナー自身がどういう時代を生きてきたかによるので仕方が無い所だと思う。僕にとってのリアルタイムでのサザンというのは「TSUNAMI」以降、さらに厳密には03年の活動再開以降なのである。まさにそのリアルタイムの時期を丸々収録した今作は僕にとって名盤以外の何物でも無く、30曲という一見許容オーバーに思えるボリュームもすんなりと満足感に変わった。
バンド以外のサポートミュージシャンを数多く起用していたり、メンバーにベース・関口和之が居るにも関わらず何曲かは桑田自らがベースを演奏していたり(本人曰く「異なったニュアンスを出すため」)といったバンドのバランスが心配になってしまう要素も見られるアルバムである。「TSUNAMI」大ヒット以降のサザンが単なる一ロックバンドという枠を超え桑田佳祐を中心とした大型プロジェクトと化した事は明白であり、その為に積り積もった疲弊が08年の無期限活動休止へと通じていったのも確かだろう。そう考えるとポップで売れ線なアルバムなんだけど聴いていてどこか切なくなってきてしまう部分もある。
おすすめ度:B+
15th 葡萄
2015年3月31日 売上約53万枚
▼収録曲
01.アロエ/02.青春番外地/03.はっぴいえんど/04.Missing Persons/05.ピースとハイライト/06.イヤな事だらけの世の中で/07.天井棧敷の怪人/08.彼氏になりたくて/09.東京VICTORY/10.ワイングラスに消えた恋/11.栄光の男/12.平和の鐘が鳴る/13.天国オン・ザ・ビーチ/14.道/15.バラ色の人生/16.蛍
15thアルバム『葡萄』。2005年の前作『キラーストリート』から9年半ぶりのアルバム。
2008年夏に無期限活動休止を宣言し、13年に再開。今作には13年の活動再開後に出されたシングル「ピースとハイライト」(1位 37.4万枚)「東京VICTORY」(1位 13.9万枚)を収録。活動休止前のシングル「DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~」「I AM YOUR SINGER」は未収録となった。「ワイングラスに消えた恋」は原由子ボーカル曲。
完全生産限定盤A(特製Tシャツ、桑田による全曲解説や写真等で構成された「葡萄白書」、年越しライブの模様を厳選して収録したDVD)、完全生産限定盤B(AからTシャツを除いた内容)、通常盤、アナログ盤の4形態で発売。限定盤A、Bは予約していないと店頭では入手困難な状況となった。
2008年の無期限活動休止以前はひたすら売れ線全開なお祭り系ナンバーが目立っていたが、今作では趣向が変わり割りと落ちついたどこか情緒のある作風になっている。大々的に復活を宣言したシングル曲「ピースとハイライト」にしても派手さはあるものの、世界情勢や歴史問題をテーマにしたメッセージ性の強い歌詞になっていてこれまでのお祭りナンバーとは一線を画す。付属の『葡萄白書』の桑田のコメントでは「その気になれば「夏だ、サザンだ!!」みたいな曲も書けたけどあえて刺激のあるテーマを投げる事で自分の世代と若い世代とを繋げたかった」との事で、人生の折り返し地点を過ぎた熟年者の立ち位置で今作が作られた事を窺わせる。
全体的に歌謡曲的な要素が強いもののそれ一辺倒な印象も無く聴き応えは抜群にあるのでかなり満足だし、10年ぶりという期待値を飛び越えた傑作。現在のサザンだからこそ生み出せた2010年代の名盤であろう。今作のベストトラックはアナログ世代の悲哀を歌った「バラ色の人生」。特に〈恋の波動で胸を焦がして 完璧すぎる世間を嗤ってやりたいな〉〈みんなが集まる架空の広場(“SNS”)で このバラ色の人生を分けてあげたいな〉のフレーズが胸に染みた。
おすすめ度:B+
プレミアムアルバム 海のOh, Yeah!!
2018年8月1日 売上約59万枚
▼Disc-1 “Daddy” side 収録曲
01.TSUNAMI/02.LOVE AFFAIR~秘密のデート~/03.BLUE HEAVEN/04.イエローマン~星の王子様~/05.SEA SIDE WOMAN BLUES/06.彩~Aja~/07.HOTEL PACIFIC/08.唐人物語(ラシャメンのうた)/09.SAUDADE~真冬の蜃気楼~/10.涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~/11.私の世紀末カルテ/12.OH!! SUMMER QUEEN~夏の女王様~/13.LONELY WOMAN/14.01MESSENGER~電子狂の詩~/15.限りなき永遠の愛/16.素敵な夢を叶えましょう
▼Disc-2 “Mommy” side 収録曲
01.東京VICTORY/02.ロックンロール・スーパーマン~Rock’n Roll Superman~/03.愛と欲望の日々/04.DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~/05.I AM YOUR SINGER/06.はっぴいえんど/07.北鎌倉の思い出/08.FRIENDS/09.ピースとハイライト/10.アロエ/11.神の島遥か国/12.栄光の男/13.BOHBO No.5/14.蛍/15.闘う戦士たちへ愛を込めて/16.壮年JUMP/17.弥蜜塌菜のしらべ
プレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』。2015年の15thアルバム『葡萄』から約3年5ヶ月ぶり。
デビュー40周年を記念した実質的なベストアルバムだが、公式で「プレミアムアルバム」と称されている。1997年以降の楽曲からセレクトされており98年のベスト『海のYeah!!』の続編的立ち位置であるが、夏をテーマにした企画ベストであった『海のYeah!!』とは異なり今作には季節等テーマ別の縛りは設定されていない。「海の家」に引っ掛けた『海のYeah!!』に対して今作のタイトルは「海のオヤー」→「産みの親」が掛かっている。予約・先着購入特典として今作と『海のYeah!!』通常盤を合わせて収納できる「海の幸ケース」&A2サイズ特製ポスターが付属した。
先行配信シングル「闘う戦士たちへ愛を込めて」「壮年JUMP」、原由子ボーカルの「北鎌倉の思い出」の3曲を新曲として収録。また完全生産限定盤にはボーナストラックとして「弥蜜塌菜のしらべ」が収録されている。これは三ツ矢サイダーCMソングとして2017年夏からオンエアされていた曲で今作で初収録となった。
これまで長年アルバム未収録のまま放置されていた「イエローマン~星の王子様~」(10位 10.6万枚)「HOTEL PACIFIC」(2位 82.5万枚)「DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~」(1位 22.5万枚)「I AM YOUR SINGER」(1位 52.3万枚)の4シングルが遂にアルバム収録された。13thアルバム『さくら』収録時に大幅なアレンジ変更が施されていた「01MESSENGER~電子狂の詩~」もシングルバージョンでは初収録。またC/Wからは「OH!! SUMMER QUEEN~夏の女王様~」がアルバム初収録となる。
選曲対象期間内のシングルでは98年の42nd「PARADISE」、00年の46th「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」、04年の49th「君こそスターだ/夢に消えたジュリア」の3シングル4曲が外されている。更にこの内「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」に関しては完全アルバム未収録のまま放置される事となった(残りの2シングル3曲はそれぞれ当時のオリジナルアルバムに収録済み)。これらは桑田佳祐自身の意向によるものであるという。
20周年ベスト『海のYeah!!』の続編として聴ける一作。厳密に言うと夏をテーマとした企画ベストだった『海のYeah!!』に対して今作はノーテーマという事でコンセプトの違いはある。しかしサザンのベストというと他には限定生産の重量級ベスト(『すいか』『HAPPY!』)かバラッドシリーズしか無く、結果的に最も最大公約数に応えたサザンらしい決定盤ベストとして『海のYeah!!』が重宝されている以上、サザン初心者はまず最初に『海のYeah!!』と今作をセットで聴く所から始めるのがオススメだ。この2作を聴けばサザン40年の歴史をある程度押さえられるので非常に手っ取り早い。
随所に桑田佳祐の意向が反映されている選曲である。普通だったらベスト盤に入るタイプの曲では無い「私の世紀末カルテ」や「FRIENDS」のような長曲を収録している点なんかは特に桑田の強い推しがあったんだろうなぁ…と(なんせソロベストアルバムの中盤に突如20分近くのメドレーをねじ込んだ過去がありますから…)。また、前々から桑田本人が嫌っている(らしい)曲だとネット上で噂されていた「君こそスターだ」もしっかりスルーされているし(発売当時Mステであんなに楽しそうに歌っていたのに…)。僕としては『バラッド3~the album of LOVE~』で何故かスルーされた名曲「この青い空、みどり~BLUE IN GREEN~」がまたしてもスルーされたのがかなり残念だった…今後更にベストの類が発売されるか分からないし、アルバム収録するならここが最後のチャンスだったと思うから。
今作の選曲期間はオリジナルアルバム単位でいうと僅か3作(4枚)ではあるものの、新曲及びアルバム未収録のまま放置されていたヒットシングルが要所要所で登場し存在感を示しているので、単なる再編集盤じゃんという感覚には全くならず通して新鮮な気持ちで聴けた。ヒット曲に紛れて聴く事で「イエローマン~星の王子様~」のようなマニアックな曲の魅力にも気づけたし、「01MESSENGER~電子狂の詩~」は『さくら』収録のアルバムバージョンしか知らなくて今作で初めてシングルアレンジを聴いたんだけど、こんなにカッコ良いロックナンバーだったのかと衝撃を受けた。
思い起こせば2002年にJ-POPに興味を持ってから初めてサザンのベスト盤をリアルタイムで手に取った(桑田ソロベストは2回経験している)わけだがやはり何というか、他の歌手のリリースと比べて一大出来事という感覚が強い。僕の中でサザンは2003年(当時ワタクシ中学2年生)からがリアルタイムなんだけど、それぞれの曲の発売当時の思い出なんかが蘇ってきて自分の半生を振り返っているような気分になれた。新たな発見もありつつ、往年のヒット曲にも浸る事ができ、更に自らの青春が蘇るという大満足なベスト盤だったし改めてサザンオールスターズって素晴らしいなと…。
おすすめ度:A+
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著者:マー・田中(@kazeno_yukue)
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