サザンオールスターズ 歴代アルバム感想&おすすめ度 #1 ~1978-1992~
1st 熱い胸さわぎ
1978年8月25日(LP) 売上約7万枚
1978年8月25日(CT) 売上約2万枚
1984年6月21日(CD)
1989年6月25日(CD、CT)
1998年4月22日(CD) 売上約0.4万枚
2008年12月3日(リマスターCD) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.勝手にシンドバッド/02.別れ話は最後に/03.当って砕けろ/04.恋はお熱く/05.茅ヶ崎に背を向けて/06.瞳の中にレインボウ/07.女呼んでブギ/08.レゲエに首ったけ/09.いとしのフィート/10.今宵あなたに
1stアルバム『熱い胸さわぎ』。
デビューシングル「勝手にシンドバッド」(51万枚)とカップリング「当って砕けろ」を収録。11月に「茅ヶ崎に背を向けて」が2ndシングル「気分しだいで責めないで」のカップリングとしてリカットされた。
1984年6月に初CD化された後、89年6月にCD再発。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
1曲目「勝手にシンドバッド」こそ現在でも圧倒的知名度を誇るデビュー曲だが、それ以降は一転してかなり地味めのナンバーが続く。90年代以降に確立された大衆的なお祭りバンドサザンのイメージを持って聴くとかなりの落差を感じるだろう。元々が70年代の作品という事で、音の古さはリマスターでも流石にカバーしきれていないとも思う。「女呼んでブギ」なんかは先にライブ映像で観た時は大迫力に感じたのに、後に今作で聴いたらCD音源はこんなにしょぼいのか…と愕然としたものである。そんなこんなで最初に今作を手にした時は、後に出たバラード集『バラッド ’77~’82』の方を先に聴いていたのでそちらに収録されていた「別れ話は最後に」「恋はお熱く」くらいしか印象に残らなかったが、繰り返し聴いていたらそれなりの良さを見出せるようにはなってきた。古き良き魅力というか。日本を代表するスーパーバンドのまさに原点という事で一度は聴いておきたいアルバム。
おすすめ度:C
2nd 10ナンバーズ・からっと
1979年4月5日(LP) 売上約47万枚
1979年4月5日(CT) 売上約19万枚
1984年6月21日(CD)
1989年6月25日(CD、CT)
1998年4月22日(CD) 売上約0.4万枚
2008年12月3日(リマスターCD) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.お願いD.J./02.奥歯を食いしばれ/03.ラチエン通りのシスター/04.思い過ごしも恋のうち/05.アブダ・カ・ダブラ(TYPE 1)/06.アブダ・カ・ダブラ(TYPE 2)/07.気分しだいで責めないで/08.Let It Boogie/09.ブルースへようこそ/10.いとしのエリー
2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』。前作『熱い胸さわぎ』から約8ヶ月ぶり。タイトルは『TENナンバーズ・からっと』と表記される事もある。
シングル「気分しだいで責めないで」(27万枚)「いとしのエリー」(72万枚)収録。7月に「思い過ごしも恋のうち」がシングルカット(22万枚)され、同時にカップリングとして「ブルースへようこそ」もカットされた。「気分しだいで責めないで」と「思い過ごしも恋のうち」は表記は無いもののアルバムバージョンであり、シングルバージョンはシングルでしか聴けない。
制作時間の関係で歌詞が締め切りに間に合わず、「奥歯を食いしばれ」「アブダ・カ・ダブラ(TYPE 2)」「ブルースへようこそ」の3曲は歌詞が記号になっている。ジャケット撮影の直前に桑田とスタッフが喧嘩をしたらしく、そのため今作のジャケット写真は怒った状態で写っているという逸話も。一気にトップ3入りを果たし、前作『熱い胸さわぎ』を大幅に上回るセールスを記録した。
1984年6月に初CD化された後、89年6月にCD再発。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
普遍的な名曲「いとしのエリー」が強烈な存在感を放つため、「いとしのエリー」だけのアルバムかと思われがちかもしれないが実は全体的に結構光る曲が揃っている。特に1曲目「お願いD.J.」の勢いとキャッチーさにはかなり心奪われたし、「ラチエン通りのシスター」もメロディーの美しさがひたすら染みる名バラードであると思う。桑田本人は今作を「駄作」としている(当時のサザンは朝から晩までテレビ出演に追われており、制作時間が満足にとれていなかったという。ノイローゼ状態にまで陥っていたとか)が、全体的には前作よりも後年のサザンらしい(あくまで“初期なりの”だが)勢いに満ちていて中々好きな一作。
おすすめ度:C+
3rd タイニイ・バブルス
1980年3月21日(LP) 売上約31万枚
1980年3月21日(CT) 売上約7万枚
1984年6月21日(CD)
1989年6月25日(CD、CT)
1998年4月22日(CD) 売上約0.4万枚
2008年12月3日(リマスターCD) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.ふたりだけのパーティー~Tiny Bubbles(type-A)/02.タバコ・ロードにセクシーばあちゃん/03.Hey!Ryudo!(ヘイ!リュード!)/04.私はピアノ/05.涙のアベニュー/06.TO YOU/07.恋するマンスリー・デイ/08.松田の子守唄/09.C調言葉に御用心/10.Tiny Bubbles(type-B)/11.働けロック・バンド(Workin’ for T.V.)
3rdアルバム『タイニイ・バブルス』。1979年の前作『10ナンバーズ・からっと』から約11か月ぶり。間の79年11月にはカセットテープのみでの企画ベスト盤『ベスト・オブ・サザンオールスターズ』がリリースされていた。
シングル「C調言葉に御用心」(37万枚)「涙のアベニュー」(10万枚)「恋するマンスリー・デイ」(今作と同発 6万枚)に加えカップリングから「Hey!Ryudo!(ヘイ!リュード!)」を収録。当時FIVE ROCK SHOWと銘打ってシングル5ヶ月連続リリースという企画を実施しており、その第2弾である「恋するマンスリー・デイ」と同時発売された。
この頃はレコーディングに専念するためテレビ出演を控えていた時期でもあり、その影響でシングルの売上は激減していたがアルバムは好調で、今作は自身初のチャート1位を獲得(売上は『10ナンバーズ・からっと』より下がった)。「私はピアノ」はキーボードの原が、「松田の子守唄」はドラムの松田がボーカルを担当している(桑田以外のメンバーがボーカルを取るのはこれが初だった)。「私はピアノ」は80年7月25日に高田みづえによってカバー、シングル発売され大ヒットした。
1984年6月に初CD化された後、89年6月にCD再発。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
1stでいう「勝手にシンドバッド」、2ndでいう「いとしのエリー」のような超有名シングルが今作には無いので若干地味なラインナップに思えるが、初めて桑田以外のボーカル曲が登場したりと意外に多彩。1曲目「ふたりだけのパーティー」なんかはこの時期のシングル以上に勢いがあるし、原ボーカルの「私はピアノ」はいつ聴いてもやっぱり大名曲だと感じる。キラーチューンこそ無いけど前2作よりもまとまったアルバムではあるように思う。ラストの「働けロック・バンド(Workin’ for T.V.)」では〈忘れるわけもなく T.V.Show その気もないのに笑う事ばかりじゃ〉〈そりゃしんどいもんでんねん〉など、当時のテレビ出演が相当ストレスだったらしき事が熱く歌われており切実。
おすすめ度:B
4th ステレオ太陽族
1981年7月21日(LP) 売上約32万枚
1981年7月21日(CT) 売上約15万枚
1984年6月21日(CD)
1989年6月25日(CD、CT)
1998年4月22日(CD) 売上約0.4万枚
2008年12月3日(リマスターCD) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.Hello My Love/02.My Foreplay Music/03.素顔で踊らせて/04.夜風のオン・ザ・ビーチ/05.恋の女のストーリー/06.我らパープー仲間/07.ラッパとおじさん(Dear M.Y’s Boogie)/08.Let’s Take a Chance/09.ステレオ太陽族/10.ムクが泣く/11.朝方ムーンライト/12.Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)/13.栞のテーマ
4thアルバム『ステレオ太陽族』。1980年の前作『タイニイ・バブルス』から1年4か月ぶり。なお間にカセットのみの企画盤ベストアルバム『Kick Off!』『アーリー・サザンオールスターズ』がリリースされていた(どちらも現在は廃盤)。
シングル「Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)」(4万枚)とカップリング「朝方ムーンライト」を収録。9月に「栞のテーマ」がシングルカット(5万枚)され、同時にカップリングとして「My Foreplay Music」もリカット。前作『タイニイ・バブルス』以降に発売されていたシングルの内「いなせなロコモーション」「ジャズマン(JAZZ MAN)」「わすれじのレイド・バック」「シャ・ラ・ラ/ごめんねチャーリー」は未収録。「ムクが泣く」はベースの関口が作詞作曲ボーカル担当。サポートメンバーとしてアレンジャー・八木正生が参加している。
1984年6月に初CD化された後、89年6月にCD再発。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
1曲目「Hello My Love」は爽やかなミディアムナンバーで単純に良い曲だし、続く「My Foreplay Music」もこの時期としては珍しく攻撃的で耳に残る。このように冒頭では非常に快調な滑り出しを見せるのだが、3曲目からいきなり大人の渋みを打ち出したムーディーなナンバーが連発される。もしも未収録となった「いなせなロコモーション」や「シャ・ラ・ラ」辺りが入っていたらまだカラフルな印象が出たかもしれないが…。『海のYeah!!』や「TSUNAMI」以降のサザンのイメージで聴くとかなり地味に感じてしまうだろう。このジャズィーな雰囲気は八木正生の影響なのだろうか。メロディーを放棄したような妙なノリの曲もありやはりなかなか受け付けられない。今作の本当の良さを味わうにはもう少し年齢を重ねないといけないかもしれない…。
おすすめ度:C
5th NUDE MAN
1982年7月21日(LP) 売上約57万枚
1982年7月21日(CT) 売上約39万枚
1984年6月21日(CD)
1989年6月25日(CD、CT)
1998年4月22日(CD) 売上約0.5万枚
2008年12月3日(リマスターCD) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.DJ・コービーの伝説/02.思い出のスター・ダスト/03.夏をあきらめて/04.流れる雲を追いかけて/05.匂艶 THE NIGHT CLUB/06.逢いたさ見たさ病める My Mind/07.PLASTIC SUPER STAR(LIVE IN BETTER DAYS)/08.Oh!クラウディア/09.女流詩人の哀歌/10.NUDE MAN/11.猫/12.来いなジャマイカ/13.Just a Little Bit
5thアルバム『NUDE MAN』。1981年の前作『ステレオ太陽族』から丁度1年ぶり。間にカセットのみの企画盤ベストアルバム『BEST ONE ’82』『Shout!』がリリースされていた(どちらも現在は廃盤)。
シングル「匂艶 The Night Club」(29万枚)収録。シングルとしては久々にトップ10入りし大ヒットとなった「チャコの海岸物語」は未収録。「流れる雲を追いかけて」は原由子ボーカル曲。また「猫」はギター大森の作詞・作曲でありボーカルも担当している。
1984年6月に初CD化された後、89年6月にCD再発。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
これ以降はテクノサウンドやコンピューターサウンドを取り入れた作風に変化してゆくため、いわゆる初期サザンのテイストは今作までとなるようだ。やはり前作のような大人の渋みを醸しだすミディアムナンバーも目立つが、一方で「PLASTIC SUPER STAR(LIVE IN BETTER DAYS)」(なんとライブテイク)のようにガツンとバンドサウンドを聞かせる曲もあり中々に聴きごたえがある。これからファン人気も高い名バラード「Oh!クラウディア」に繋がる部分なんかはかなり好き。久々のヒットとなった「チャコの海岸物語」を未収録にしてしまうとはかなり強気だが、あの曲は少々異色のナンバーだった為もし収録されていたとしても浮いていただろうから賢明な判断だったかもしれない。おかげでまとまりのある一作に仕上がっているように思う。
おすすめ度:C+
1stバラッドベスト バラッド ’77~’82
1982年12月5日(CT) 売上約54万枚
1985年4月21日(CD) 売上約2万枚
1998年6月25日(CD) 売上約6万枚
▼DISC-1 収録曲
01.朝方ムーンライト/02.ラチエン通りのシスター/03.私はピアノ/04.Just a Little Bit/05.シャ・ラ・ラ/06.涙のアベニュー/07.松田の子守唄/08.夏をあきらめて/09.別れ話は最後に/10.いとしのエリー
▼DISC-2 収録曲
01.恋の女のストーリー/02.ひょうたんからこま/03.恋はお熱く/04.わすれじのレイド・バック/05.Oh!クラウディア/06.働けロック・バンド(Workin’ for T.V.)/07.Ya Ya(あの時代を忘れない)/08.流れる雲を追いかけて/09.思い出のスター・ダスト/10.素顔で踊らせて
1stバラッドベスト『バラッド ’77~’82』。同年発売の5thアルバム『NUDE MAN』から約5か月ぶり。
デビューからのバラード楽曲をセレクトした2枚組。この時期に乱発されていたカセットのみの企画ベスト盤の一つだったが、予想外の大ヒットを記録した事から1985年4月にCD盤としても発売された。現行盤が存在するベストアルバムとしては今作が最古となる(この他のカセット盤企画ベスト群は全て廃盤になっている)。LP盤は存在しない。
「シャ・ラ・ラ」「ひょうたんからこま」「わすれじのレイド・バック」「Ya Ya(あの時代を忘れない)」はオリジナルアルバム未収録。デビューが78年にも関わらず何故タイトルが『’77~’82』なのかは謎(デビュー前に作った曲があるからという説アリ)。以降バラッドシリーズとしてシリーズ化され、1987年に『BALLADE 2 ’83~’86』、2000年に『バラッド3~the album of LOVE~』がリリースされている。
85年4月に初CD化。デビュー20周年を迎えた98年6月には音量調整を施した上で再発されている(リマスタリングはされていない)。この98年盤は現行盤として未だ累計を伸ばしており最終ランクインは2018年9月となっている。
中学生の頃なので記憶はやや曖昧だが、『バラッド3~the album of LOVE~』『海のYeah!!』の次に買ったのが確か今作。当時「私はピアノ」と「Ya Ya」が入ってるアルバムを探しており今作がドンピシャだったので購入した。その後外出中や旅行中等事あるごとに繰り返し何度も聴いていたので思い入れがかなり強い作品。
サザンのバラード、さらに初期の非常にブルージーだったりまったりしたナンバーが集められているので00年代以降のリスナーからするとだいぶ地味なラインナップに感じられると思うが、個人的にはかなり名曲揃いの一作。サザンバラードといっても「真夏の果実」や「TSUNAMI」とは異なり大人の哀愁を感じさせる渋い曲ばかりが揃えられているが、どの曲も確かなグッドメロディーなので聴き込めばハマる。オリジナルアルバム単位で聴いていくとちょっとフザけたノリやあえて外した感じの曲にも出会う事となるので、そういうのを避けて初期サザンのメロディアスなミディアム曲だけ抽出して聴くにはベストな作品である。
ただ一つ残念なのが、08年の旧アルバム一斉リマスターの際に今作含めた企画ベスト群が無視された事。その為今作のリマスター盤は存在しない。一応オリジナルアルバムのリマスター盤や05年再発シングルをかき集めれば今作収録曲は高音質で揃えられるものの、今作の並びで聴く事によって発見できる魅力というのも必ずある(「朝方ムーンライト」や「恋の女のストーリー」なんかは今作でピックアップされてなかったら「ただの地味な曲」感覚で終わっていたと思う)と思うのでいつの日かリマスター再発されるのを密かに待っている(もう無さそうだなぁ…)。
おすすめ度:B
6th 綺麗
1983年7月5日(LP) 売上約36万枚
1983年7月5日(CT) 売上約26万枚
1989年6月25日(CD、CT)
1998年4月22日(CD) 売上約0.4万枚
2008年12月8日(リマスターCD) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.マチルダBABY/02.赤い炎の女/03.かしの樹の下で/04.星降る夜のHARLOT/05.ALLSTARS’ JUNGO/06.そんなヒロシに騙されて/07.NEVER FALL IN LOVE AGAIN/08.YELLOW NEW YORKER/09.MICO/10.サラ・ジェーン/11.南たいへいよ音頭/12.ALLSTARS’ JUNGO(Instrumental)/13.EMANON/14.旅姿六人衆
6thアルバム『綺麗』。前年の1stバラッドベスト『バラッド ’77~’82』から7か月ぶり、オリジナルアルバムとしては『NUDE MAN』以来約1年ぶりとなった。今作からはビクター内のサザン専用プライベートレーベル「タイシタレーベル」からのリリースとなっている。
シングル「EMANON」(今作と同発 7万枚)とC/W「ALLSTARS’ JUNGO」を収録。前作『NUDE MAN』以降のシングル「Ya Ya(あの時代を忘れない)」「ボディ・スペシャルⅡ(BODY SPECIAL)」は未収録であり、実質オール新曲のアルバムだった。「そんなヒロシに騙されて」は原由子ボーカル、「南たいへいよ音頭」は関口和之ボーカル曲。
1989年6月に初CD化。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
スパニッシュ音楽だったり南国風味を取り入れていたり(と言われてもイマイチよく分からないが)、さらにシンセサイザーを用いたコンピューターサウンドも盛り込んだり、このあたりから80年代特有の空気感が姿を見せ始める。新たな作風に挑戦しようという意気込みは感じるが、現在ではこの80年代流行のコンピューター・テクノサウンドというのはかなり時代を感じるし、何より全体的に楽曲が地味なのもあってかなり印象が薄い一作。個人的にはこの時期の曲を集めたバラード集『BALLADE 2 ’83~’86』を先に聴いており、そこで聴きなれていた数曲はやはり良いと思ったけどその他の曲は未だにそこまで好きになれない。
おすすめ度:C
7th 人気者で行こう
1984年7月7日(LP) 売上約51万枚
1984年7月7日(CT) 売上約29万枚
1984年7月21日(CD)
1989年6月25日(CD、CT)
1998年5月22日(CD) 売上約0.4万枚
2008年12月3日(リマスターCD) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)/02.よどみ萎え、枯れて舞え/03.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)/04.開きっ放しのマシュルーム/05.あっという間の夢のTONIGHT/06.シャボン/07.海/08.夕方 Hold On Me/09.女のカッパ/10.メリケン情緒は涙のカラー/11.なんば君の事務所/12.祭はラッパッパ/13.Dear John
7thアルバム『人気者で行こう』。1983年の前作『綺麗』からほぼ1年ぶり。間にカセット盤のみの企画ベスト『原由子 with サザンオールスターズ』がリリースされていた(現在は廃盤)。
シングル「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」(30万枚)とC/W「なんば君の事務所」を収録。前年11月のシングルで紅白にも出場した「東京シャッフル」は未収録。「シャボン」は原由子ボーカル、「なんば君の事務所」は大森隆志作曲のインスト曲。「海」はバンド、ジューシィ・フルーツに提供した曲のセルフカバー。
リリースから2週間後の1984年7月21日に早くも初CD化され、その後89年6月に再発。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
前作『綺麗』に引き続き、当時の流行だったコンピューターサウンドが全面的に取り入れられた意欲作。ただ今作では楽曲自体キャッチーで勢いを感じる物が多くだいぶ聴きやすい。シングル「ミス・ブランニュー・デイ」はコンピューターサウンドとサザンらしさが上手いこと融合した傑作だし、原ボーカルの叙情ナンバー「シャボン」、『海のYeah!!』にも収録され個人的に80年代サザンナンバー1ソングである名曲「海」等かなり充実したラインナップ。特にホーンセクションを用いたアップナンバー「夕方 Hold On Me」の開放感は素晴らしい。前作との落差がかなり効いている所もあるかもしれないが、80年代サザンのアルバムで最もお気に入りなのは今作。『海のYeah!!』や「TSUNAMI」等で興味を持ったリスナーが80年代のオリジナルアルバムを聴くと大抵その地味さ・渋さに衝撃を受けると思うんだけど、そのギャップが最も薄いのは今作ではなかろうか?
おすすめ度:B
8th KAMAKURA
1985年9月14日(LP) 売上約60万枚
1985年9月14日(CT) 売上約32万枚
1985年10月21日(KAMAKURA-BOX) 売上不明
1998年5月22日(CD) 売上約0.5万枚
2008年12月3日(リマスターCD) 売上約0.3万枚
▼Disc-1 収録曲
01.Computer Children/02.真昼の情景(このせまい野原いっぱい)/03.古戦場で濡れん坊は昭和のHero/04.愛する女性とのすれ違い/05.死体置場でロマンスを/06.欲しくて欲しくてたまらない/07.Happy Birthday/08.メロディ(Melody)/09.吉田拓郎の唄/10.鎌倉物語
▼Disc-2 収録曲
01.顔/02.Bye Bye My Love(U are the one)/03.Brown Cherry/04.Please!/05.星空のビリー・ホリデイ/06.最後の日射病/07.夕陽に別れを告げて~メリーゴーランド/08.怪物君の空/09.Long-haired Lady/10.悲しみはメリーゴーランド
8thアルバム『KAMAKURA』。1984年の前作『人気者で行こう』から約1年2ヶ月ぶり。
シングル「Bye Bye My Love(U are the one)」(38万枚)「メロディ(Melody)」(26万枚)収録。前年に発売されていた全英語詞シングル「Tarako」は未収録で、オリジナルアルバムはおろか限定ベスト『すいか』『HAPPY!』にもスルーされ完全アルバム未収録となった。「鎌倉物語」は原ボーカル、「最後の日射病」は関口作詞作曲ボーカル曲。当時原は産休中であり、自宅マンションにレコーディング機材を持ち込んでベッドの上で歌入れをしたという。
2枚組のオリジナルアルバムであり、総レコーディング時間には1800時間を費やしたと言われる。当初は1枚組で7月の発売を予定していたが、制作が間に合わず2枚組へ形を変え9月へと延期された。今作を機にサザンは活動を休止、メンバーはそれぞれソロ活動に入った。ちなみに今作のCMには明石家さんまが出演。
発売直後の10月にはステッカー・1986年度カレンダー等とセットになった「KAMAKURA-BOX」としてリリースされている。デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上でCD再発。30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
『綺麗』辺りから始まったコンピューターサウンドの追及が一つの完成形を迎えた超大作…という事なんだけど、10曲入り×2枚というボリュームは現在聴くと言うほど大作という感じはしない。リリース当時はレコードという事もあってまさに超大作!だったんだろうけど今の感覚ではそこまでの感銘は受けないというのが正直な所だ。通して聴いた時に印象に残っているのはやっぱりシングル2曲や『海のYeah!!』で馴染み深い「鎌倉物語」、今作では異色なメロディアスラブバラード「愛する女性とのすれ違い」等になってしまう。バンドとして挑戦的な姿勢を打ち出した、まさに今作の真髄を担っているであろうと思われる大多数の曲達には未だどうもハマれない。サウンド面では確かに実験的要素の強さが垣間見えるし、もしもリアルタイムで出会っていたらだいぶ強烈な印象となって残っていた作品だろうなという気はする。
個人的には世代ど真ん中だった2005年の『キラーストリート』の方がよっぽど超大作っぽいと感じるが、これはやはりリアルタイムかそれに近い時期に聴いているか否かが大きいんだろうなと思う。昔からのファンには『キラーストリート』よりも圧倒的に今作の方が評価高いわけだし。
おすすめ度:C+
2ndバラッドベスト BALLADE 2 ’83-’86
1987年6月21日(CD) 売上約14万枚
1987年6月21日(CT) 売上約12万枚
1998年6月25日(CD) 売上約3万枚
▼Disc-1 収録曲
01.かしの樹の下で/02.愛する女性とのすれ違い/03.あっという間の夢のTONIGHT/04.Bye Bye My Love(U are the one)/05.NEVER FALL IN LOVE AGAIN/06.鎌倉物語/07.海/08.Please!/09.サラ・ジェーン/10.夕陽に別れを告げて~メリーゴーランド
▼Disc-2 収録曲
01.シャボン/02.JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)/03.メロディ(Melody)/04.女のカッパ/05.Long-haired Lady/06.EMANON/07.星空のビリー・ホリデイ/08.悲しみはメリーゴーランド/09.旅姿六人衆/10.Dear John
2ndバラッドベスト『BALLADE 2 ’83-’86』。1985年の前作『KAMAKURA』から約1年9ヶ月ぶり。1982年の『バラッド ’77~’82』に続くバラードベスト第2弾。最初からCDとカセットで発売され、LP盤は存在しない。
6th『綺麗』、7th『人気者で行こう』、8th『KAMAKURA』の3アルバムからバラード中心に選出されている。前作と異なりここでしか聴けない曲というのは一つも無い。ただ「女のカッパ」はイントロ前に虫の鳴き声がずらしてあり厳密には別アレンジバージョンとなる。前作『KAMAKURA』に引き続き、CMには明石家さんまが出演。13年後の2000年には続編『バラッド3~the album of LOVE~』がリリースされている。
デビュー20周年を迎えた98年には音量調整を施した上で再発されている。2008年のアルバムリマスター一斉再発の際には企画盤は対象外となったため今作のリマスター盤は存在しない。現行盤となっている事から98年盤は長く売れ続け最終ランクインは2013年8月となっている。
この時期はコンピューターサウンドの追及に目覚めていた頃だけに、オリジナルアルバム単位で聴くと実験的な曲の目白押しだったりするので、こうしてメロディー重視のミディアム曲だけを抽出して楽しめる編集盤の存在というのはやはり意義があると思う。こうして聴くと地味ながらも味のある曲が多いなと気づく。ただ今作でしか聴けない曲というのは無いので、もしもこの時期のオリジナルまで聴いてみようと思うのならば今作は無視してオリジナルリマスター3枚を揃えてしまった方が良いかもしれない。前作『バラッド ’77~’82』同様にリマスター盤が無いので音の迫力がイマイチという難点もあるし…。まあこの時期のサザンに手軽に触れてみたいというならばオススメの一作ではある。
おすすめ度:C+
9th Southern All Stars
1990年1月13日(初回盤) 売上約70万枚
1990年1月13日(通常盤) 売上約48万枚
1998年5月22日 売上約0.3万枚
2008年12月3日(リマスター盤) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.フリフリ’65/02.愛は花のように(Ole!)/03.悪魔の花/04.忘れられたBig Wave/05.YOU/06.ナチカサヌ恋歌/07.OH,GIRL(悲しい胸のスクリーン)/08.女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)/09.政治家/10.MARIKO/11.さよならベイビー/12.GORILLA/13.逢いたくなった時に君はここにいない
9thアルバム『Southern All Stars』。1985年の前作『KAMAKURA』を最後にサザンとしての活動は休止していたが88年にシングル「みんなのうた」で復活。89年には期間限定生産ベスト『すいか』がリリースされていた。
シングル「女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)」(11万枚)「さよならベイビー」(25万枚)「フリフリ’65」(18万枚)収録。復活シングル「みんなのうた」は未収録。「ナチカサヌ恋歌」は原由子ボーカル曲。
それまでレコード中心だった音楽業界がほぼ完全にCDに移行してから初のアルバムだが一応レコード・カセットでも少数発売された模様。初回盤はデジタルウォッチ付。当時のチャートは品番が異なれば同一タイトルであっても別集計であったため初回・通常で別々に集計された。それぞれの売上を合算するとサザン初のミリオンセラーとなる。
デビュー20周年を迎えた98年に再発。また30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
90年代に突入して最初のアルバム、さらに自身のバンド名を掲げたセルフタイトルという事で何かアニバーサリー的な印象もあるアルバムだが、実際聴いてみると内容は割と地味。80年代後半のコンピューター的な地味さからは脱却しているが、かといって勢いが特別出ているわけでも無いというか。スタイリッシュなアップナンバー「YOU」や、冴えまくったメロディーが絶品な「逢いたくなった時に君はここにいない」等、明らかに80年代とはオーラの異なる名曲もあるものの、それらは全て後のベスト盤『海のYeah!!』や『バラッド3~the album of LOVE~』に収録されてしまっているので今作を聴き返す事は少ない。ただ現在のサザン像に通じる最初の一作ではあると思うので重要な立ち位置のアルバムである事は確か。
おすすめ度:C+
Southern All Stars / サザンオールスターズ
10th 稲村ジェーン
1990年9月1日 売上約131万枚
1998年5月22日 売上約0.3万枚
2008年12月3日(リマスター盤) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.稲村ジェーン/02.希望の轍/03.忘れられたBig Wave/04.美しい砂のテーマ/05.LOVE POTION NO.9/06.真夏の果実/07.マンボ/08.東京サリーちゃん/09.マリエル/10.愛は花のように(Ole!)/11.愛して愛して愛しちゃったのよ
桑田佳祐が監督した映画『稲村ジェーン』のサウンドトラック。正式な名義は「サザンオールスターズ&オールスターズ」であるが、サザンの10thアルバムとしても扱われている。
同年の9thアルバム『Southern All Stars』からも2曲収録されており、サザンオールスターズ・サザンオールスターズ&オールスターズ・稲村オーケストラの3つの名義が曲によって使い分けされている。アレンジャー小林武史やギタリスト小倉博和が参加したものが別名義なのかと思いきやそういう訳でも無く境界線は曖昧。
シングル「真夏の果実」(54万枚)収録。9月21日に「愛して愛して愛しちゃったのよ」が原由子&稲村オーケストラ名義でリカットされた(1万枚)。これは原ボーカル曲であり、和田弘とマヒナスターズのカバー。同時にカップリングとして「LOVE POTION NO.9」もカットされた。
デビュー20周年を迎えた1998年に再発。また30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。ちなみに映画『稲村ジェーン』は長らくレーザーディスク・VHSのみしかソフト化されていなかったが、サザンデビュー43周年の2021年6月25日遂にBlu-ray・DVD化された。
「希望の轍」「真夏の果実」といった大名曲が収録されているものの、実質は映画のサウンドトラックという事なのでやや異色な仕上がりだ。ラテンテイストの曲だったりスペイン語詞だったりインストだったり、やはりサザンのアルバムとしてはなんとも微妙な一作。前作『Southern All Stars』からも楽曲が収録されているし、前作が好きならばその延長線上として今作も気に入るのではないかと思う。
あと各楽曲の間にカップルが『稲村ジェーン』を観に来たという設定での会話が収録されている(男性役はサザンと同じアミューズ所属の寺脇康文らしい)のが一つのポイント。これは案外嫌いでは無い。映画そのものが未DVD化で実質封印作であった頃は『稲村ジェーン』という作品を間接的にせよ最も肌で感じられるのはこの僅かな会話部分だけだったわけで貴重だったし、現在でも面白いアクセントとして捉えている。ラスト「愛して愛して愛しちゃったのよ」終了後に聞こえる女性の「暑かったけど、、、短かったよね、、、夏。。。」という台詞が何故かすっごく好き(文字ではこのニュアンスを伝えきれないのが無念)。
おすすめ度:C+
11th 世に万葉の花が咲くなり
1992年9月26日 売上約179万枚
1998年5月22日 売上約0.3万枚
2008年12月3日(リマスター盤) 売上約0.2万枚
▼収録曲
01.BOON BOON BOON~OUR LOVE[MEDLEY]/02.GUITAR MAN’S RAG(君に奏でるギター)/03.せつない胸に風が吹いてた/04.シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA/05.慕情/06.ニッポンのヒール/07.ポカンポカンと雨が降る(レイニー ナイト イン ブルー)/08.HAIR/09.君だけに夢をもう一度/10.DING DONG(僕だけのアイドル)/11.涙のキッス/12.ブリブリボーダーライン/13.亀が泳ぐ街/14.ホリデイ~スリラー「魔の休日」より/15.IF I EVER HEAR YOU KNOCKING ON MY DOOR/16.CHRISTMAS TIME FOREVER
11thアルバム『世に万葉の花が咲くなり』。1990年の前作『稲村ジェーン』から約2年ぶり。
シングル「シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA」(96万枚)「涙のキッス」(154万枚)に加えカップリングから「君だけに夢をもう一度」「ホリデイ~スリラー「魔の休日」より」を収録。91年のシングル「ネオ・ブラボー!!」は未収録。「ポカンポカンと雨が降る(レイニー ナイト イン ブルー)」は原由子ボーカル曲。
今作では80年代後半の桑田ソロ以降、断続的に関わりのあったアレンジャー・小林武史が全面的に参加しており、編曲クレジットでも「小林武史&サザンオールスターズ」というように小林の名前がバンドよりも先になっている。
CDバブルの後押しもあり、先行シングル2作が自身最大ヒットを記録する中リリースされ4週連続1位、ミリオンセラーを達成した。92年度年間アルバムチャート7位。
デビュー20周年を迎えた1998年に再発。また30周年を迎えた2008年にはオリジナルアルバム全作が初のリマスタリング盤として一斉再発された。
桑田ソロ並びに1988年のシングル「みんなのうた」以降関わっていた小林武史が本格的に全面参加。ロック色の強い曲やメロディアスなバラード、さらによく分からない妙なノリの曲など楽曲のバリエーションはこれまでの中で最高に多彩。全ての編曲にも参加している小林の影響か、アルバム全体にサイケというかカオスな空気感が漂っているのが魅力だ。後にMr.ChildrenやMY LITTLE LOVERを大ヒットに導く彼の手腕は既にここで発揮されていたのだ(ちなみにミスチルのデビューは今作と同じ92年)。
個人的に、高校時代に今作を初めて聴いた時にはサッパリ良いと思わなかったんだけど20代半ばになって俄然この魅力に憑りつかれてしまった。1枚に16曲も詰め込まれているのでかなり長いが、不思議とダルさを感じずに聴ける。長さを感じるより前にこの混沌としたサウンドの波に飲まれてしまうという感じ。カオスな世界に恍惚と浸りたい時には是非今作を。名盤である。
おすすめ度:A+
※この続き(1995年の『HAPPY!』以降)は下記記事でございます
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著者:マー・田中(@kazeno_yukue)
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